まるで不人気で閉店間近の蕎麦屋のように、カレーやカツ丼を出したりメニューに中華も加えたり、しまいにはラーメンまで出すような始末で、ウソくさい!

 次に、「一斉授業」というスタイルが、現場ではすでに機能不全になっている。

 誤魔化しきれないのだ。

 日本全国の小学校、中学校、高校で午前8時半には1000万人以上の児童生徒が着席して黒板のある方を向き、教科書片手に現れる先生を待つ。考えてみれば、この習慣を戦後50年以上にわたって維持した学校という現場は、素晴らしく強力なシステムだった。

 発展途上国としての経済成長期に、解説書を正しく読んで作業を迅速に処理するブルーカラーと、早く正確に事務処理をこなすホワイトカラーを大量生産するには、あたかも工場のような照明設備の教室で「一斉授業」をやるのが最も効率的だったのだ。

 ところが、日本は1998年から成熟社会に入っている。すべてのもの、こと、ひとが多様化し、社会が複雑化し、変化が激しくなった。学校でも児童生徒が多様化し、軽度な発達障害も一括りに軽視することはできない。家庭の事情も複雑化し、離婚も虐待も増えている。学習内容の変化も速く、印刷物である教科書には、この1年で新しく発見された事柄は反映されないし、地図の国名すら変わってしまう。

 先生が黒板と教科書で生徒に一斉に教えるのは、20年前からすでに無理があったのだ。

 しかも、子どもたちの学力は「普通の子」が7割いるようなひと山型ではなく、「低学力で落ちこぼれちゃった子」と「(塾に通っていて)もうわかっちゃってる吹きこぼれの子」が激しく分かれるフタコブラクダ型になっている。真ん中の普通の子に向けた「一斉授業」はなおさら意味をなさないから、授業がウソくさい!

●藤原和博(ふじはら・かずひろ)
1955年、東京都生まれ。教育改革実践家。78年、東京大学経済学部卒業後、現在の株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任し、93年よりヨーロッパ駐在、96年、同社の初代フェローとなる。2003~08年、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。16~18年、奈良市立一条高等学校校長。21年、オンライン寺子屋「朝礼だけの学校」を開校する。 主著に『10年後、君に仕事はあるのか?─未来を生きるための「雇われる力」』(ダイヤモンド社)、『坂の上の坂』(ポプラ社)、『60歳からの教科書─お金・家族・死のルール』(朝日新書)など累計160万部。ちくま文庫から「人生の教科書」コレクションを刊行。詳しくは「よのなかnet」へ。

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