レイチェルは、理由もなくそうしたわけではなかった。若い頃のレオは、本人も気づかぬうちに、絆を育む種を蒔いていた。それが育ち、めぐりめぐってレオ(と子どもたち)に実りをもたらした。レイチェルや他の子どもたちにとって、父親との絆はかけがえのないものであり、他の人との関係では得られないものだった。親子の絆が若い頃のレオの努力の賜物であることも理解していた。

 質問票の最後に、レイチェルはこう書き添えた。

追伸。質問票への返信が遅くなってごめんなさい。私は今、山奥の森の中に住んでいて、水道も電気もない生活をしているものですから。締め切りをちょっと過ぎてしまって!

 なるほど、親子のキャンプ旅行からの学びは、十分生きているようだ。

 デマルコ家の例をつぶさに見ていくと、誰かにしっかりと注意を向けると、相手も自然に同じ姿勢を学ぶことがわかる。愛情や思いやりを与え合い、帰属感を育み、人間関係全般についてポジティブな感情をもつようになり、それがさらにポジティブな人間関係の育成を促し、健康増進にもつながる。レオとデマルコ家の場合、互いにしっかりと注意を向け合っていたことが、家族全員の人生に大きな恩恵をもたらしたようだ。

■毎日、ほんの少しずつ注意と気配りを増やそう

 今よりも時間をかけるべき人間関係を考えてみてほしい、ということはすでにお伝えした。そこで、もう一歩踏み込んだ質問をしようと思う。一緒にいることが多い相手の中で、あなたの注意を十分に受け取っている人は誰か?

 思っている以上に答えにくい質問かもしれない。私たちは、注意ならいつも十分に払っている、と思っているものだ。だが、無意識の行為や反応は、なかなか正確に把握しづらいものだ。大切な人に対して十分な注意を向けているかどうかを確認するには、自分自身をよく観察する必要がある。

 具体的な方法は人によって変わるが、ここでは簡単な方法を三つ紹介しよう。

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