次に、話し合いの最中の自分の気持ちとパートナーの気持ちについて質問した。また、相手の意図や動機をどう感じていたかも尋ねた。なかには、相手が自分を理解しようとする努力がどのくらい感じられたかを尋ねる質問もあった。
筆者らは、共感の正確性──相手の感情を正しく理解すること──が、関係への満足度の高さと相関すると予想していた。たしかに相関関係はあった。パートナーの感情を理解している場合、満足度も高かった。
だが、もっと重要なのは共感しようとする努力だった。とくに女性の被験者にとってはそうだった。相手を理解しようとする真摯な努力をパートナーから感じた場合、理解の正確さとは関わりなく、話し合いを肯定的に受け止めていた。
つまり、相手を理解するのはすばらしいことだが、理解しようと努力するだけでも、人間関係は大きく改善される。
他者を理解する努力が自然にできる人もいるが、意識しないとできない人もいる。最初はうまくできなくても、努力を重ねると楽にできるようになる。パートナーとの交流では、こう自問してみよう。
・この人は今、どんな気分だろう?
・何を考えているのだろう?
・私は何か見逃していないだろうか?
・自分が相手の立場だったら、どう感じるだろうか?
そして、できれば、相手に興味があり、理解しようと努めていることを伝えよう──小さな努力ではあるけれども、極めて大きな効果を生む可能性がある。
レオは、家族と過ごした時間が被験者のなかでとくに長いわけではなかったが、長年、この点を改善しようと意識的に努めていたし、実際に家族と過ごす時間をとても大切にしていた。といっても、壮大な冒険や外国旅行に連れていったり、家族との時間に刺激的な企画を目一杯詰め込んだわけではない。その逆だ。レオは日常生活のなかで子どもや妻にしっかりと注意を向け、しかもほぼ一生を通してそれを実践し続けた。家族がレオを必要としているときは、すぐに対応した。話に耳を傾け、問いかけ、いつでも力になると態度で示した。