――文書には、「世界や社会の変化はこれからも続くものであり、そうした変化に応じて私たちの務めに対する社会の要請も変わってくるものと思われます」というお言葉もありました。社会の要請の変化とは、具体的に何を指すのでしょうか?

今の上皇・上皇后両陛下は、災害が頻発した平成の時代において、被災地訪問をはじめ、社会からこぼれ落ちそうな人に、一生懸命、目を向けてこられました。それは今の両陛下も引き継いでいるけれど、やはり社会が変化すれば「天皇はこういう仕事もやるべきでは?」という意見も出てくるでしょう。そのときに、“令和流”ともいえる新しい変化が生まれるのだという両陛下のお考えが、この言葉から読み取れます。即位して早々にコロナ禍で社会が停滞してしまったこともあって、具体的な答えはまだ模索中なのではないかと思います。ただ、たとえば天皇陛下は水問題にものすごく関心を向けられていますよね。水の問題は貧困の問題とも関係していて、平成よりもさらに複雑になった貧困や分断に目を向けることにもつながる、令和の時代らしいテーマだと思います。

――一方で、「国民と苦楽を共にするという皇室の在り方が大切であるとの考えを今後とも持ち続けていきたい」との言葉もありました。これは、時代が変わっても、上皇と上皇后が確立した“平成流”の精神は守るということを指しているのでしょうか?

平成になる前は、皇室に対する国民の関心は低く、一部では皇室反対論も渦巻いていたりと、危機的な状況でした。それを、今の上皇・上皇后両陛下のお二人がうまく立て直して今に至っている流れがあるので、“平成流”から大幅に方向転換するというのは考えづらい。基本的な方向性は踏襲しつつ、社会の変化に応じて少しずつ具体的な仕事を増やしたり変えていったりするのだと思います。それも自分たち主導で変えていくのではなく、あくまで時代の変化に応じて変わっていくというスタンスに、“平成流”への配慮がにじみ出ています。

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