結婚から30年を迎えた天皇、皇后両陛下。長女愛子さまとともに、養蚕の作業をした=2023年5月30日、皇居内の紅葉山御養蚕所、宮内庁提供
結婚から30年を迎えた天皇、皇后両陛下。長女愛子さまとともに、養蚕の作業をした=2023年5月30日、皇居内の紅葉山御養蚕所、宮内庁提供

「今日で結婚30年を迎えると思うと、感慨もひとしおです」。6月9日、天皇皇后両陛下は、30回目の結婚記念日を迎えられた。両陛下は宮内庁を通じて文書で感想を公表し、「二人で多くのことを経験し、互いに助け合いつつ、喜びを分かち合い、そして時には悲しみを共にし、これまでの歩みを進めてこられたことに深い感謝の念を覚えます」と振り返った。この文書には両陛下のどのような“思い”が込められているのか。象徴天皇制に詳しい名古屋大学人文学研究科准教授の河西秀哉氏に読み解いてもらった。

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――発表された文書について、どのような第一印象を抱きましたか?

おそらく、宮内記者会は記者会見を求めていたと思われますが、やはり実現しなかったのかと思いました。雅子さまはだいぶ復調されて、外出先で記者に会ったときなどは声をおかけになることが増えているとは聞くのですが、まだ正式な会見は難しいのでしょうね。文書の内容としては、両陛下の堅実で真面目なお人柄がにじみ出ている印象です。ご結婚30年に際してのお気持ちなので、もっと自分たちのことを書いてもいいと思うのですが、国民や上皇・上皇后など、自分たちを支えてくれる人への感謝が前面に出ている文章だと思います。

――文書のなかで特に注目した言葉はありますか?

「時には言葉にならない心の声に耳を傾けながら、(中略)様々な状況にある人たちに心を寄せていきたい」という表現は、今の天皇皇后両陛下ならではという感じがします。大きな声の人が勝つんじゃない、苦しみを抱えて声にできない人の声をすくってこそ象徴天皇なんだという自覚があるから、こうしたお言葉になっているのだと思います。「苦しみを抱えている人」というのは、雅子さまの姿とも重なります。長い間病気で苦しんでいる雅子さまと、そんな雅子さまを支える天皇陛下の、まさに当事者として、世の中の弱い人たちの心に寄り添いたいという気持ちが表れている言葉だと思います。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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