2018年6月1日には、全国弁連所属の弁護士や支援者など約50人が、参議院議員会館会議室で緊急院内集会を開き、『政治家の皆さん、家庭連合(旧統一教会)からの支援を受けないで下さい』と題した声明文も採択されていた。「政治家が家庭連合の式典に出席し、祝辞を述べ、祝電を打つという行為は、家庭連合にお墨付きとして利用され、反社会的な活動を容易にするものであり、政治家が統一教会と連携することがどのような社会的弊害をもたらすか考えるべき」と旧統一教会との関係について、国会議員に注意と再考を促す内容で、各議員会館内の全国会議員に配布された。

 このような全国弁連の弁護士らの動きを踏まえれば、安倍氏も、有力国会議員が旧統一教会を支援しているような発言をすることが、旧統一教会にお墨付きを与えることになること、それが霊感商法や高額献金等の被害者などに強い反発を持たれることは認識できたはずだ。

 ところが、安倍氏は、旧統一教会の関連団体の国際イベントにリモート登壇し、教団トップの韓鶴子総裁に「敬意を表する」とまで言い切ったのである。

 島薗進編『政治と宗教 統一教会問題と危機に直面する公共空間』(岩波新書)の中で、中野昌宏・青山学院大学教授は、

 このように手の込んだ祝辞を述べ、イベントに協力しているということは、彼は統一教会の活動を公に是認していると見るほかはない。あまつさえ安倍はこのメッセージの中で、「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を、高く評価いたします」と発言した。まさに教団に家庭を破壊された山上容疑者が、このビデオを目にしたのである。彼の起こした行動が肯定できないものだとはいえ、この瞬間の彼の胸中は、想像に難くない。

 と述べている。

 安倍氏の行動は、あまりにも大胆で無神経な行動だったと言える。それが、銃撃され殺害されるなどという結果を招くことは誰にも予想できなかったとしても、少なくとも、旧統一教会の霊感商法等の反社会的行為の被害者や信者二世に、強い反感と憎悪を持たれることは認識すべきだった。ところが、安倍氏は、敢(あ)えて、UPFのイベントへのリモート登壇を行い、韓鶴子総裁を礼賛したのである。

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