母親が旧統一教会にのめりこんで、1億円を超える高額献金を行って破産、家庭が崩壊したことで、旧統一教会に対して恨みを持つ山上容疑者の攻撃の矛先が、教団と関係が深い安倍氏に向かったとされている。
統一教会問題を長年取材してきた鈴木エイト氏は、著書『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』で、安倍晋三氏は、「1968年に同教団系の政治組織・国際勝共連合の創設の後ろ盾となって以降、教団と友好関係にあった祖父の岸信介元首相や、教会員を自民党国会議員の秘書として紹介し各議員を教団のセミナーへ勧誘していたとされる父親の安倍晋太郎元外相とは異なり」、少なくとも、小泉政権で官房長官を務めていた2006年頃までは、「統一教会と一定の距離を置いていた形跡がある」としている。
その根拠に、2006年5月、統一教会のフロント組織である天宙平和連合(UPF)が福岡で開催したイベント「祖国郷土還元日本大会」に、当時官房長官だった安倍氏らが祝電を贈ったことが発覚した際に、それ以前から継続して統一教会や勝共連合の批判を続ける有田芳生(よしふ)参議院議員(当時)のブログで、安倍氏自身の“判断”による祝電ではないとの見解を示していること、当時の報道を見ても「私人の立場で地元事務所から『官房長官』の肩書で祝電を送ったとの報告を受けている。誤解を招きかねない対応であるので、担当者によく注意した」との安倍氏のコメントが各メディアで報じられていたことを挙げている(18~20頁)。
その安倍氏は、民主党への政権交代で自民党が野党に転落した頃から、統一教会との関係を深め、組織票支援を依頼するまでに変節したとされている。
■安倍氏のビデオメッセージ
2021年9月12日、ソウル近郊の教団施設で、旧統一教会のフロント団体・UPFが主催し「150か国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う」とされた「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022 希望前進大会」なるリモート集会にVIPとして、安倍晋三前内閣総理大臣とドナルド・トランプ前アメリカ大統領がリモート登壇した。