始球式後には映像のことを聞かれ、「あそこからプロの第一歩が始まった。ジャイアンツは私のふるさと」と答えるなど、古巣への愛着が今もあることが伺える。

 だが、松井氏には巨人以外にもヤンキースという“古巣”が存在する。渡米後は拠点をニューヨークに構えていることもあり、同球団への復帰の可能性も取り沙汰されるが……。

「監督やコーチとしてヤンキースへ復帰することは考えられない。常勝を求められる球団で、スタッフになる人材もその道のプロが求められる。選手としての実績や名声は関係なく、マイナーから徹底的に勉強する必要がある。松井氏の言動を見ていると、その気持ちはなさそう」(在米スポーツライター)

「2009年のワールドシリーズではMVPに輝いたレジェンドOBの一人。OBオールスターではひときわ大きな歓声を浴びるなど、誰もがも感謝の気持ちを忘れていない。しかし監督、コーチになって欲しいと思う関係者やファンはいないだろう」(米紙ヤンキース担当記者)

 米球界では選手時代の実績があるからといって指導者になれるわけではない。指導スキルを身につけ、現場での経験を積んだ者にチャンスが与えられる。松井氏はGM特別アドバイザーの肩書きを持ち、春季キャンプでは巡回コーチとして招かれる。しかし実際に現場の指導者として招聘される可能性は少ないという。

「現役引退後はビジネスや他ジャンルに興味が移る選手も少なくないが、松井氏の野球への情熱は変わらない。定期的に野球教室を開催したり、時には素振りや打撃練習をすることもあるらしい。もちろん趣味の範疇だが、野球と離れられないのだろう」(在米スポーツライター)

 昨年9月にはニューヨーク州ハドソン・バレーでNPO法人「松井55ベースボールファウンデーション」主催の野球教室を行った。社会貢献活動の一環だが、野球に触れていたい気持ちがあるのは間違いない。

「巨人からの始球式の打診も毎年のようにあったという。今年、受諾したのはタイミングがあったのだろう。また家族のことを考えると、将来的には帰国することも視野に入れているはず。即座に行動に移すことはないだろうが、多くの選択肢を考えているはず」(巨人時代から松井氏を知るスポーツライター)

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」
次のページ
松井氏の監督招聘は今が最後のチャンス?