そもそも、なぜラーメン店でこうした事例が目立つのか。
ラーメン評論家でフードジャーナリストの山路力也氏は「昔から、常連客しか来なかったような、いわゆるクローズド(閉鎖的)なコミュニティーとして存在していたラーメン店が数多くありました」としつつ、こう分析する。
「そうした店が、口コミサイトやSNSなどで存在を知られるようになり、常連だけではなく不特定多数の客が訪れるようになりました。そのため、店がそれまで大事にしてきた環境やコミュニティーを守るため、ルールを決めて掲示したり、ルールを守ってくれない客にSNSを通じて苦言を呈したりするようになったのではないでしょうか。昔から、物申す、物申したいという店主はたくさんいたでしょうし、実際に店の中で同様の発言や意見はしていたと思います。今はSNSが発達したため、それが可視化されるようになっただけなのだろうと考えています」
ただ、山路氏は、客商売である以上、SNSでの発言や言葉遣いには、より慎重にならなくてはいけない、とくぎを刺す。
「ファンビジネス的な側面もある業態なので、その発信の仕方ひとつでファンをつかむこともできる一方、逆にファンが減ったり、アンチが増えたりするリスクもあります。具体的な店名は挙げませんが、激しい言葉で客をののしったり、レスに対してケンカ腰で反応している投稿も散見されます。店側は、それで一瞬スッキリするのかも知れませんが、店のイメージやブランディング的にはマイナスでしかありません」
SNSは情報発信をする手段としては便利だが、時には無用のトラブルを生む。店主の投稿が炎上し、第三者に激しく非難されることになれば店にとってはダメージでしかない。そうした事態を避けるために、店と客には何が求められているのか。
「店は商品とサービスを提供し、客はその対価としてお金を支払う。その関係性に上下や貴賎はないと考えています。店も客も、お互いの立場や相手の気持ちをおもんぱかって行動することができれば、大抵のトラブルは回避できるのではないでしょうか」(山路さん)
店側も客も、「こちらが上」という印象を持たれない気遣いをすることが、最も大切なのかもしれない。
(AERA dot.編集部・國府田英之)