帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「そして、虚空へ」。

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【生と死】ポイント

(1)老化と死とを受け容れるのがナイス・エイジング

(2)死を命のプロセスと考えて死の向こう側を確信する

(3)ナイス・エイジングのその先には、虚空への道が

 いよいよ、週刊朝日ともお別れです。週刊朝日は文学青年の気質だった父がいつも購入していました。幼い頃から見慣れていたので、私にとっては郷愁を感じる存在なのです。それだけに、お別れは何とも残念です。

 でも、「ナイス・エイジングのすすめ」の連載を194回も重ねることができたのは、私にとってこの上ない幸せでした。始めたときには1年ぐらいで終わるかと思っていたのですが、よく続いたものです。

 最後にもう一度、ナイス・エイジングとは何かについて語っておきたいと思います。敢(あ)えて定義すると、こうなります。

「老化と死とをそれとして認め、受け容れた上で、楽しく抵抗しながら、自分なりの養生を果たしていき、生と死の統合を目指す」

 老化とは大自然の摂理ですから、アンチエイジングなどと言っても、どうにもなりません。いつかは老いてしまいます。だから、まなじりを決して抵抗するのではなく、さりとて、相手のなすがままに任せるのでもなく、楽しく抵抗していこうというのです。

 死も同じく大自然の摂理です。死を免れて永遠に生きられるなんて誰も考えてはいません。それなのに死から目を逸らそうとする人が多いのはなぜなのでしょうか。それは、やはり死を自分の命の終わりだと見なすからだと思います。死を命のプロセスの一つと考えて、死の向こう側を確信してこそ、死を受け容れることができます。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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