「MORE」のあと1983年の「LEE」の創刊に立ち会い、「メンズノンノ」の編集長も務めた日高は、その職業人生の終わりに近づいている。

「MORE」創刊2号には、『火の国のキャリア・ウーマン四代記』という無署名の長文のルポが掲載されていた。存命中だった95歳曾祖母から18歳の澄子にいたる四代の女性が、職業に挑戦し自立しようとしたクロニクルだ。そのルポはこう終わっている。

<ひいおばあちゃんも泣かなかった。おばあちゃんも、母も、決して泣きはしなかった。(中略)。──頑張れ、澄子さん! 頑張れ4代の女たち!>

 その応援歌は、当時、様々な差別に苦しんでいた女性たちへの応援歌でもあり、日高のその後の人生を切り開いた歌でもあったのだ。

 日高は、今も、集英社内定の電報とともに、お茶の水女子大の生協で心をときめかせた「MORE」の創刊号を大事にとっている。

下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。

週刊朝日  2023年3月31日号