メールやLINEを使っていれば、誰でも誤変換や誤送信の経験があるだろう。意味不明なメールが送られてきて頭をひねった経験も。
『おかんメール』(扶桑社)はそんな中でも特にシュールな「母のメール」に着目した本だった。〈いま小学校、占拠してるからあんたも来なさい!〉はテロではなく選挙当日の投票の誘い。〈おばあちゃん食べた?─END─〉は省略しすぎて娘を恐怖させたメール。
その続編が『あかんメール』。仕事場や、家族や恋人や友人との間で交わされたメールの、ゾッとするような(でも野次馬にはおもしろい)事例がこれでもかと集められている。
まず非常に気まずいのは、相手先を間違って送った誤送信。
〈了解、よろしく頼む 明日はこちらで対応します〉という上司からのLINE。ところが次に同じ上司から来たメッセージは〈今日は残業しない●から美味しい~■★食べたいな~ ××のために早く帰るからね~!〉(●には犬、■はビール、★はカレーの絵文字。××は名前と思ってください)。なんだ、この差は。上司は妻に送ったつもりだったのだ(意外に恐妻家)。恋人や友人のつもりで上司や親にエロいメールを送る事故も多いみたい。
もっと単純なのもあります。〈裸婦にハマって大変だったよ〉はゴルフ場からの報告。地震の日に送って相手を仰天させた〈家は大爆発だよ〉は「大丈夫」の誤変換。同じく〈信玄は山梨だって〉という「知ってるってば」なメールは「震源」の変換ミス。15分のつもりで〈わりぃ 15年遅れる〉と送った人。待ち合わせの相手に〈あと45分くらい?〉と問われ〈そんなにかからないと思う!だって海賊だから!〉と「快速」のつもりで返した人。
メールには予測変換という機能が着いている殻、誤爆に至る霊も大井。一時違え場、底はもう別世界。〈大学卒業したら一緒に相撲〉がプロポーズの言葉と知っても御道路かないこと。それがメールの大ゴミだ。
※週刊朝日 2014年12月26日号