だが、称号の授与は本来、王室が公表するものだ。それを待たずに自分たちから半ば強引に発表したのには、国王の機先を制する狙いがあった。
国王は王室のスリム化のため、2人の孫への称号授与を阻止するといわれていた。必要な勅許状を出すとされたが、決断しなかった。早く手を打たなかったために、夫妻に先を越されたのだ。
夫妻の発表を受けて、英王室は公式サイトを更新し、「マスター・アーチー」「ミス・リリベット」としていた紹介文を「プリンス・アーチー」「プリンセス・リリベット」に改めた。14日時点で公式な発表はないが、王室は夫妻が戴冠式に出席する準備に入ったという。かねて国王は夫妻の出席を望んでいたといい、子どもの称号ゲットが条件だったと勘ぐられている。
メーガン妃は、子どもが成人したときに、称号を維持するか放棄するかを本人が決めればよいとした。ただ、国王の妹アン王女と末弟のエドワード王子はそれぞれ2人の子をもつが、「子どもにはロイヤルにとらわれない生き方を望む」として称号を辞退。アン王女の長女ザラさんは「私はなんて運が良いのでしょう」とコメントしている。
ハリー王子はかつて「王室の悪い遺伝子を断ち切りたい」と話し、メーガン妃は「称号は苦痛をもたらす」と述べていた。一転して称号にこだわるようになったのはなぜなのか……。国民のいらだちは、どれだけ夫妻から批判されても、完全には切り捨てられない父王にも向かう。
国王は夫妻がフロッグモア・コテージを出た後も、英国滞在中はバッキンガム宮殿やダイアナ元妃の旧宅に宿泊してよいとした。明け渡しを求めた理由も「(弟の)アンドルー王子に譲るための措置だった」とするなど、夫妻を刺激しないように振る舞っているようにもみえる。
英国民からは、チャールズ国王が守るべきは“問題児”のハリー王子やアンドルー王子ではなく、次期国王であるウィリアム皇太子ではないかとの声が上がっている。(ジャーナリスト・多賀幹子)
※週刊朝日 2023年3月31日号