巨人時代に先発投手として活躍した、元プロ野球選手による自伝だ。日本ハムを経てメジャーに挑戦した後、2008年に横浜に入るも、同年オフに戦力外通告を受けて引退。現在は横浜DeNAの用具担当職員として働く。
 ボールの管理からグラウンド整備、クリーニング業者との打ち合わせまで、選手が野球に集中できるように環境を整えるのが仕事ゆえ、気分としては「『ドラえもん』みたいなもの」という。
 解雇された後、野球界に残りたいと球団に懇願し、バッティング投手になった。気持ちよく打たせるために毎日150球。現役時代には視界にもなかった厳しさを思い知る。そこから「第二の人生」がスタートする。
 印象深いのは、PL学園野球部の先輩で、自分より半年余り前に現役引退した巨人のエース桑田真澄さんとのことだ。戦力外通告から約1カ月半後、野球教室を手伝った日の別れ際にかけられた「いいかい、祐作。とにかくこれからの人生は謙虚に、誠実に生きなさい」との助言がしみ入る。極めれば「裏方」こそ職人の世界と思わせる。

週刊朝日 2014年11月14日号