ベストセラーになった『困ってるひと』は、ミャンマー(ビルマ)難民支援をする大学院生が難病となり、助ける人から助けられる人になるてんまつを描いた闘病記だった。続編となる本書は、著者が退院するところから始まる。
といっても、病気が治ったわけではない。退院して病院のすぐそばにあるマンションに越したのは、現代日本の医療制度のため。長期入院患者は病院の診療報酬の減額対象となるからなのだ。
ナースコールひとつで看護師が駆けつけてくれる病院と違って、難病患者にとってシャバは過酷だ。ましてひとり暮らしにはなおさら。一日一時間のヘルパーの手を借り、ネットを駆使してなんとか生き延びる。文字どおり毎日がサバイバル。障害者とも高齢者とも違う、難病患者という「困ってる」現実がここにある。でも前作同様、著者の文章はユーモラスで明るい。
読んでいて、なんぼなんでもひどいなあ、と思ったことがある。著者が電動車いすを購入する件だ。なにしろ目と鼻の先にある病院に通うのだってたいへんなんだから、電動車いすは必需品だ。ところがタダじゃない(ぼくにとっては第一のびっくり)。その人の状態に応じて行政からの補助金が違う。その補助金の額を東京都の心身障害者福祉センターが「判定」する(第二のびっくり)。著者は高田馬場にあるセンターに行くのだが、建物が古くて難病患者にはハードルだらけだ。おまけに「判定」する職員からは、できるだけ補助金を少なく済ませようとする態度が見え見え(第三のびっくり)。しかも電動車いすが届いたのはその8カ月後だ(第四のびっくり)。東京という街は、日本という国は、難病患者や障害者はじめ、弱者にはほんとに冷たい。
こうして日々サバイバルの著者を、とてつもない危機が襲う。2011年3月11日。著者の実家は福島県。著者の中で「人の役に立ちたい」という欲求が大きくなっていくのだが……。
※週刊朝日 2014年10月3日号