卵価格の高騰の背景に、鳥インフルエンザの大流行がある。海外では人が感染し、死者も報告されている。現状や注意点を専門家に聞いた。
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物価の優等生だった卵価格が高騰している。JA全農たまご(東京)によると、卵卸値の2月平均基準値は同月として42年ぶり高値の1キロ当たり327円となった。
「過去最大規模で感染が拡大する今季の高病原性鳥インフルエンザの影響を受け、国内鶏卵生産量が大幅に減少しています」(JA全農たまご)
鳥インフルによる鶏の殺処分が今シーズンはすでに1500万羽を超えており、過去最多という。そのほとんどが採卵鶏とされ、全国で飼育される鶏の数に対して1割を超えている。
今シーズンの鳥インフル大流行の要因について、【1】これまで何年に1回かの流行だったのが3年連続になっている、【2】1シーズンのうちで数が多い、と指摘するのが獣医学・微生物学が専門の迫田義博・北海道大学教授。昨年9月下旬に神奈川県伊勢原市で回収された野鳥のハヤブサが鳥インフルの陽性反応となり、今シーズンの鳥インフルの第1号と話す。
冬の使者となる渡り鳥は飛来のピークが例年、10~11月。シベリアから南下したカモが感染していて、それをハヤブサが食べたと推測され、迫田さんは「第1陣からウイルスが見つかった」という。その後も、さまざまなルートで、かなりの数の鳥たちが感染しながら日本に渡ってきたと、迫田さんはみている。
野鳥は環境省の管轄だが、家禽を管轄する農林水産省は今シーズンの鳥インフルについて、過去最速の昨年10月28日に国内1例目が確認されたとし、岡山県倉敷市の養鶏場の事例を挙げる。これまで発生のなかった福島、鳥取、山形、沖縄、長崎、群馬の各県を挙げ、全国どこでも発生リスクが高くなっているとしている。
この鳥インフルの由来について、迫田さんは「いまの鳥インフルは1996年に中国広東省で生まれた」と話す。97年には鳥から人への感染が報告されたという。