作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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先日、友人ふたりと珍しく政治の話が白熱しました。いままでも何度も社会問題について話していますが、お互い譲らず流さず、三者三様の意見をぶつけあわせるのは初めてだったかもしれません。傍から見たら、ちょっとした言い争いくらいには見えたかも。
三人とも、差別がなく、同一労働同一賃金で、富が1カ所に集中しない、格差の少ない社会に変わることを願っており、庶民の生活が豊かになる形の景気回復が叶えば解決できる社会問題はいくつもあるだろうという点では意見が一致していました。
にもかかわらず、それを叶えるための基礎的な考え方と、立脚点が大きく異なるのです。
現状の人口比率を考えたら、若者が望む社会を投票で叶えるのは無理という考えからスタートする者、豊かな時代を満喫してきたシニア層と豊かな時代を知らない若い世代どちらの意識改革も必要という者。私は、庶民経済の停滞が、制度的にも意識的にも、女性の権利や自由を脅かすことにつながる恐れをもっています。
2時間くらい侃々諤々やりましたが、同じ社会を目指しているはずなのに、互いの意見に同意することは最後までありませんでした。もちろん、考え方の尊重はします。
白熱はしたものの、関係性が悪くなることはありませんでした。互いに異論を唱えても、個人攻撃と捉えられることはないという確固とした信頼関係があったからだと思います。
加えて、三人とも同じ社会に向き合いながら、見えている世界がかなり異なることを、議論の途中で気づけたことが大きい。
同じ新聞を読み、同じニュース番組を観ていても、成育環境や半径5メートルの生活、性別や職種といった属性によって、レンズがフォーカスするイシューは異なるのです。当たり前と言えば当たり前だけれど、その前提をきちんと開示、共有せずに、社会問題について話すことがいままで多かったと反省しました。
加えて、「未来」のスパンも人それぞれ。10年なのか30年なのか、三者三様でした。最後に、客観的事実への向き合い方。端的に言えば、のみ込むか、抗うか。これだけ前提条件が異なれば、同じ山の頂上を目指していても、登山ルートが異なるのは当然。
社会問題の話は難しいというけれど、それぞれの世界の見え方を開示してからなら、少しは話しやすくなるかも。
○じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中
※AERA 2023年3月20日号