『(仮)は返すぜ☆be your soul/Party! Party!/ジャンパー! [CD+DVD] 』アップアップガールズ(仮)
『(仮)は返すぜ☆be your soul/Party! Party!/ジャンパー! [CD+DVD] 』アップアップガールズ(仮)
『(仮)は返すぜ☆be your soul/Party! Party!/ジャンパー!  』アップアップガールズ(仮)
『(仮)は返すぜ☆be your soul/Party! Party!/ジャンパー! 』アップアップガールズ(仮)

 鼻水が止まらない。目がかゆい。ところかまわず、くしゃみが出る。
 いよいよ花粉症の季節だ。「杉よ、なぜ俺をこんなにいじめるのだ」と提訴したくなる。

 だがいくら鼻水が豪快に噴き出ようと締め切りを守り、にこやかに原稿を提出するのがプロというものである。などと自分ごときが書くと「何をキザなことを」という声も飛んできそうな気がするが、この「プロの重み」というべき心がけ、実のところぼくはつい最近教えられたばかりだ。

 2013年4月6日土曜日、ラフォーレ六本木で行なわれた「〈TOWER RECORDS Presents アップアップガールズ(仮)対バン行脚(仮)〉~東京決戦 VS BiS~」。

 いま思い出しても鳥肌が立ってくるような凄まじいライブだったが、このとき、とあるメンバーが白熱しすぎて身体の沸点を超えてしまったのだろう、パフォーマンス中に鼻血を出し、ステージからはけた。「ああ、これは大変だ。今日はもう戻ってこれないかもしれないな」と思ったのは自分だけではないはずだ。しかしなんと、あにはからんや、びっくり仰天有頂天、そのメンバーは数分でステージに戻り、まるで何事もなかったかのように、壮絶なパフォーマンスを続けた。もちろん再び鼻血が出ることに備えて、鼻にはしっかりと詰め物がしてあったのだが(といっても、ぼくは下手後方で見ていたので克明に捉えたわけでなない)、「鼻に詰め物をしてもアイドルはやっぱり輝いているんだなあ」という妙な感心と共に、そのプロ意識に強く心を打たれたわけである。

 だからぼくはいま、鼻にチリ紙をさして文章を書いている。ああ、確かに鼻水でジュルジュルだ。頭もややボーッとする。だが、そんなものでこの、燃えたぎる魂にブレーキがかかると思ったら大間違いだ!

 ところでアップアップガールズ(仮)は結成初期から“定期公演”に取り組んでいる。ぼくが参加したのはその番外編というべき“黒船公演”あたりからだから、草創期の様子はDVDで後追いするのみだが、《I know》や《KAPPORE エエジャナイカ》にはすでに現在に通じる実力が刻み込まれていて心に刺さる。後者には森咲樹と古川小夏が、ものすごい、そうだなあ4小節はあろうかというロング・トーンを出し切る場面があるけれど、この時点でもう、彼女たちにこれほどの声量と肺活量があったのか、と唸らされるばかり。

 なるほど初期アプガに自らの持ち歌はなかった。だがローリング・ストーンズのファースト・アルバムだってカヴァー曲だらけだったではないか。誰の何を歌っても、音楽の神に選ばれた面々はそれを自身の一部にしてしまうのだ。

 2014年2月2日、“アップアップガールズ(仮) 定期公演EXTRA”と題する新シリーズが始まった。歌とダンス以外の様々な面も知ってもらうための企画だ。場所は「AKIBAカルチャーズ劇場」。アプガの単独ライブに一度でも足を運んだ方なら、彼女たちが抜群のトーク能力を持っていることに気づき、驚くことだろう。メンバーがとぼけた発言をするや否やそれを耳ざとく聞きつけた古川小夏が高速でツッコミを入れ、さらに観客から大きな笑いを引き出す。

 EXTRA第1回公演のタイトルは、「小夏の部屋へようこそ」。ぼくはてっきり古川小夏が玉ねぎ状の髪型で登場してゲストに容赦ない高速ツッコミを浴びせながらトークショーを展開するものだと思っていた。しかし実際の内容は違った。開始早々、主役が“死ぬ”。その後は現世のメンバー6人と、あの世の古川小夏が一緒になって歌ったりねちっこい寸劇を繰り広げたりする。ぼくが芸能記者なら「アプガ、ミュージカルに進出!」と書くに決まっている。

 第2弾公演「アップアップガールズ(仮)は一体何と戦っているんだっ!!」では、“6月1日(日曜)、中野サンプラザで単独公演決定”という涙モノのニュースが彼女たちの所属するT-Palette Recordsの代表である嶺脇育夫氏から発表された。このコンサート・ホールに7人だけで立つことがアプガ(とファン)にとってどんなに深い意味を持つものなのか、ぜひ各自でお調べいただければ幸いだ。

 第3弾公演のタイトルは「佐保道場」。アプガが日頃、トレーナーの指導のもとにおこなっているエクササイズをファンの前で見せてしまおうという内容だ。つまりこの運動を真似して続けたら誰だってアプガのような身体能力に近づく、理屈上ではそう言うことも可能である。だがこの献立は「過酷」のひとことでしかなく、それをサラリとこなすアプガのスタミナに改めて畏敬の念が沸いた。

 前半はエクササイズと歌を交互に繰り返すという超人技で観客を圧倒し、後半では佐保明梨がメンバーとの殺陣を披露。最後の最後には、バットを蹴り折るという新境地でAKIBAカルチャーズ劇場の空気を揺らした。

「すごいものを見た」と、ぼくは思った。そして同時に、「これはさすがに再演不能だろう。われわれは本当に特別な瞬間を目撃してしまったのだ」という気持ちにも襲われた。だがありがたいことに、この模様を、誰かが映像に収めていた。しかも今度、市販が決まった。4月9日に発売されるトリプルA面CDシングル「(仮)は返すぜ☆be your soul/Party! Party!/ジャンパー!」の初回限定盤に、ついてくる。もう一度いおう、今度出るアプガの新曲の初回限定盤では、「佐保道場」のDVD(約60分のフル・ヴァージョン)も一緒に楽しめる。

 これはもう、買うしかないではないか。
 CD+DVDで構成された“初回限定盤”は、いまやアイドル界ではごく当たり前の仕様となった。しかし「バット折り」や「殺陣」を含むDVDがつくのは前代未聞である、と断言できるはずだ。アプガの周りは、つねに愛と驚きと喜びに満ち溢れている。[次回4/21(月)更新予定]

(追伸)
 この原稿をたまたま読んで、アプガに関心を抱いた方が日本全国にいらっしゃることを願う。そんなあなたに朗報! 全国ツアー「アップアップガールズ(仮)1st 全国ツアー アプガ第二章(仮)進軍~中野に向かって~」が3月21日の名古屋ボトムライン公演からスタートする(今池駅すぐそば)。ボトムラインといえば、マーカス・ミラーやマイケル・シェンカーやドクター・ジョン等も出た場所ではないか。そこでアプガが歌い踊る、これは洋楽ファンも必見必聴であると言い切りたい。