人生の後半というか臨終期になると夢の神様は人間から無意識を排除して、死の世界への旅の準備をさせようとしているのかも知れません。死の世界にはもしかしたら無意識など必要ないのかも知れません。生きている人間にだけ与えられているのが無意識だとすると確かに肉体のない死者には無意識など不必要です。死んで尚かつ無意識があるとか夢があるとかはどう考えてもおかしいです。

 やっとわかり始めてきました。死の予行演習のために無意識を、僕のようなつまらない夢によってボチボチ、その死の準備に入ろうと手助けをしてくれているのかも知れません。神秘主義では夢は死と同一の体験とみているところがあります。

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰

週刊朝日  2023年3月17日号

暮らしとモノ班 for promotion
「Amazonブラックフライデー」週末にみんなは何買った?売れ筋から効率よくイイモノをチェックしよう