政治家から最も本音を引き出せるのが、サシで向き合う酒の場だ。描く政局、政敵への怒り、「実はあの時」という打ち明け話。通常はオフレコが前提だが、ICレコーダーを前にして、どこまで話をしてもらえるか。本書はそれに挑戦した産経新聞政治部記者による、酒場インタビュー集だ。
首相に返り咲く1カ月前、安倍晋三氏は手酌で炭酸マッコリを飲み、ホルモンを頬張りながら「デフレ脱却には、中央銀行の徹底した意志が必要だ」と宣言。民主党の玄葉光一郎元外相は地元の冷酒をあおりつつ、「穏健保守を軸に再構築を」と党内の路線対立に終止符を打つ意思を示した。キャバクラ通いに忙しい自民党の新人議員締め上げ策も、石破茂幹事長と野田聖子総務会長の口から飛び出した。
店は政治家側が選択した。ビストロから中華料理屋まで、日ごろうかがうことのできないあの政治家の味の嗜好がわかるのも、本書の特徴だ。
ちなみに取材は2011年7月から。登場する23人中、7人に今はバッジがない。永田町の栄枯盛衰は、実に早い。
※週刊朝日 2013年9月6日号