東京大学工学部卒業後、同大学院を卒業。学生の就職先企業として最上位と崇められる世界有数の経営コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に新卒で入社しながら、1年4カ月で退職し、お笑い芸人に転身。目を疑うようなこの経歴の持ち主が『私がマッキンゼーを辞めた理由―自分の人生を切り拓く決断力―』の著者、石井てる美さんです。



 現在はワタナベエンターテインメント所属のお笑い芸人として活動する石井さんが、マッキンゼーに入社し、悩み、退職し、お笑い芸人になるまでを「さすが元コンサルタント」と思わせる明快な文章で綴っています。



「コンサルタントの仕事は、まず『イシュー』と呼ばれる"解決すべき問題"を特定し、その問題に対する解決策の『仮説』を先に立てます。その仮説が正しいかさまざまな情報をもとに検証し、仮説が間違っていると分かればすぐに書き替えるという、強烈な『仮説思考』のもとに進められます」



「『どうしたら人生後悔しないか?』と自分に問い、『お笑い芸人になる』という強烈な仮説が生まれた以上、仮説を検証するべく即行動するしかなかったのです」



 石井さんはマッキンゼーで叩きこまれた「仮説思考」や「即断・即決・即行動」の考え方を自身の人生に応用し「生まれ変わったらやりたい」と思っていたお笑い芸人にチャレンジすることを決意。また彼女は日々の仕事の中で「その仕事を続ける3つの条件」を見出します。



1. 好きかどうか

2. 人より得意か

3. その先に目標があるか



 これらの条件を丁寧に検証し、マッキンゼーでの仕事が上記に1つでも当てはまるのであれば会社に残ろうと考えたそうですが、3つを洗い出した結果はすべて「NO」。石井さんは退職を決断し、お笑いのスクールに通い始めるのです。



 自身の熱い思いに正直に、世間の目に打ち克って新たなステージに転身した石井さんの生き方は、気付くと「世間的な正解」や「人の目」を基準にしてしまう私たちの眼前の霧を明るく晴らしてくれるようです。