表題だけでも興味津々な『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』。8人の論客によるメッセージ的論考集である。
企画の契機は、尖閣諸島をめぐる中国の強硬な外交姿勢への反発などから〈こうした関心を利用し、極端な意見を述べて興味を惹こうとする政治家やメディアが頻繁に現れるようになった〉こと。勇ましい発言をする人をどう説得するか、お悩みのあなたは必読である。
まず、あなたが知るべきは「戦争は損な選択だ」という事実である。
〈経済の停滞が地球規模で膨らんでいる時代であれば手負いになるリスクは何が何でも避けるべきですが、日本はまるで率先してリスクを背負い込もうとしているようです〉(富坂聰)。〈中国がいま気にくわないからといって、いたずらにお互いの国民感情を挑発し合う言動をくりかえすことは、戦争への危険の皮膚感覚を失った「右からの平和ボケ」以外のなにものでもない〉(東郷和彦)
戦争好きな人は概して軍事音痴なことも知っておいたほうがいい。軍事衝突がいま起こったら、日本は壊滅的なダメージを被るだろう。〈なぜなら日本は、「戦争」を想定した国づくりをこの六十八年間、まったく行っていなかったからだ〉(保阪正康)。〈日々、与野党の政治家と付き合う中で私が思ったことは、「こんな日本の政治家のレベルでは、自衛隊を海外に送ってオペレーションするのは危険すぎる」ということだった〉(江田憲司)
そして沖縄である。普天間基地の辺野古移設、オスプレイの配備、「主権回復の日」。〈長年、沖縄にまつわる問題を取材し続けてきた経験から顧みて、今ほど息苦しい思いをすることはない〉(金平茂紀)。沖縄では民意の地殻変動が起きている。〈基地受け入れの代償として振興策をあてがう「補償型の基地維持政策」は、もはや力を失っている〉(松元剛)
さて〈内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなた〉とは誰か。もしかしてあの人か?
※週刊朝日 2013年7月26日号