早稲田大学にはかねてから「男と女と早稲女(わせじょ)がいる」という「定説」が存在している。化粧っ気が無かったり、酒がやたらと強かったり。けれどもガサツ一辺倒なワケではなく、場の空気や人の気持ちが読めて……「男でも女でもない」と言われる早稲女の物語を、立教大学出身の著者が書いた。
 主人公の香夏子は、早稲田大学教育学部の4年生。五つもあった内定を蹴って、念願の出版業界に進路を決めた初志貫徹型の早稲女だ。所属する演劇サークルは、脚本と演出を担当する長津田が全く脚本を完成させないせいで、ただの飲みサークルと化している。そして、このだらしない男こそ、香夏子の「初めての男にして唯一の男」なのだ。
 典型的早稲女とダメ早稲男。そんなふたりの恋愛を中心に、立教、日本女子、学習院、慶應、青山学院の女子が続々と参入するストーリーは、華やかだが汗臭い。「○○大学の人間であること」と「私であること」の狭間で、素直に、無様に、揺れ動く自意識。イタくて可愛い、これぞまさに女子のための青春小説だ。

週刊朝日 2012年9月21日号

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