東京都の小池百合子知事
東京都の小池百合子知事

■東京都の回答は……

 こうした懸念に対して、東京都はどう考えているのか。AERA dot.の取材に対して、東京都都市整備局は、樹木の伐採は「織り込み済み」だったと答えた。

「整備ですから、伐採もあるかもしれないが、創出する緑もあることを想定しています。4列のイチョウ並木は必ず保全することは(方針に)示していました」(担当者)

 18本のイチョウについては、「絶対に残すという位置づけになっていない」とし、「まちづくり指針のなかで、どうさばくかは事業者の提案による」という。事前に説明が尽くされていたかについては、「法令に基づいて手続きを適切に行った」と述べた。

 一方、小池百合子知事は5月26日に、事業者4者に対して「都民の共感と参画を得ながらまちづくりを推進する」ようにと要請し、既存樹木について「極力保存、または移植する」ことを求めた。

 これに対して、代表事業者の三井不動産広報部はAERA dot.の取材にこう答えた。

「現在は樹木医による詳細な調査を行っています。一本でも多くの樹木を残していく方向で検討しており、結果は後日公表します」(担当者)

 また、ラグビー場と野球場の配置を入れ替える理由についてはこう説明した。

「まちづくり指針で、配置変更は前提として決められていました。それぞれの競技をなるべく継続しながら計画を進めていくという、競技の継続性の観点から、入れ替えが必要になりました」(担当者)

 だが、この配置転換によって、少なくとも18本のイチョウの木は、いまの場所から姿を消すことになる。移植先もいまだ決まっていない。

■小池都知事は参院選をにらんで計画に急ブレーキか

 さまざまな問題が露呈した今回の再開発には、都議からも疑問の声が上がる。地域政党「自由を守る会」代表の上田令子都議はこう語る。

「そもそも、これほどの樹木を伐採する前提で計画が進んでいたこと自体が問題です。(都は)都市計画をつまびらかにせずに進めようとする傾向があります。現在は環境アセスメント(環境影響評価)の審議が長引いていますが、本当はこちらも“ザル”で通す予定だったのが、反対の声が大きくなり慎重になったということでしょう。そもそも、都市計画の青写真はできていたのだから、伐採は暗黙の了解だったはずです。小池知事が5月末になって事業者に要請を出したのも、参院選対策のように思えてなりません。都民ファーストの会は東京選挙区から候補者を出していますので、反対運動が起きている計画を強引に推し進めれば選挙に影響しかねません。事業者からすれば『話が違う』と困惑しているところもあるでしょう」

 迷走を重ねる神宮外苑地区の再開発計画の“落としどころ”はどこになるのか。東京都と事業者の誠実な対応が望まれる。(AERA dot.編集部・岩下明日香)