前述の通り、11年と12年に「低反発の統一球」を使用し、極端に「投高打低」になった事例がある。10年のパ・リーグ平均防御率は3.94で、11年に2.95と実に1点近く防御率が向上した。それに伴い、10年のパ・リーグ平均打率.270は、11年に.251と一気に2分近くも下がっている。もっと具体的に言えば、「防御率3点以下」は10年は4人だったが、11年は13人に増加。反対に「3割打者」は10年に13人いたが、11年に5人に減少した。その傾向は数字を見れば一目瞭然だ。10年の防御率10位は涌井秀章(西武=当時<以下同>)の3.67、11年の10位は帆足和幸(西武)の2.83と向上している。10年の打率10位は小谷野栄一(日本ハム)の.311で、11年の10位は松田宣浩(ソフトバンク)の.282と3分近くも極端に低下している。

「パ・リーグ優位」を実証する結果がある。05年に始まったセ・パ交流戦は、17年間でパの14勝3敗(20年は実施せず)。同じく05年以降の日本シリーズはパの13勝4敗だ。パ・リーグがなぜ強くなったのか。DH制において、投手が代打を出されて交代することがない。球場が広いので、本塁打を浴びる危険性が少ない。この2つが「投手が大きく育つ」要因と考えてよいかもしれない。その好投手を打とうとして打者も大きく育ち、その好打者をまた投手が抑えるという循環なのだろう。例えば、2年連続首位打者に輝いた吉田正尚(オリックス)の打撃のスイングスピードと破壊音は凄まじいが、その吉田を佐々木や千賀が豪速球で空振りさせる。こんな見ごたえのある勝負はセ・リーグには見当たらない。

 セ・パともに最近は規定投球回数に達する投手は少なくなった。実は18~20年はセ・パともに10人も存在しないのである。「先発-中継ぎ―抑え」の投手分業制が進んだことが大きく影響した。しかし、異変が起きた。21年のパ・リーグは規定投球回数に到達した選手が14人もいた。今年164キロをマークした千賀は「3割打者が存在しなくなる時代がくる」とコメントしている。7月4日現在、3割打者はセ・リーグ7人に対しパ・リーグはわずか2人だ。これだけ好投手が顔をそろえれば、パ・リーグが「投高打低」になるのも必然である。(新條雅紀)