飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回、話を聞かせてくれたのは、長野県麻績(おみ)村に暮らす行政書士、飯森美代子さん(58歳)です。25年前に母親が脳梗塞(こうそく)になり、在宅介護を始めました。介護は17年続きましたが、家に招いた元野良猫家族(母猫と3匹の子)が心を支え、母との関係も良くしてくれたそうです。猫との関わりを、2回に分けてお届けします。
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私の家は山間の過疎地にあり、両隣に暮らすのは90歳超えのお年寄り。この地で8年前に母親(享年93)を見送り、今は20歳の雄猫「チャッペー」とのんびり暮らしています。チャッペーの母猫「チョンまね」、きょうだい猫「タマ」「メメ」はすでに虹の橋を渡りましたが、今も多くの思い出に支えられています。猫とのこんな関係もあるんだ、ということを伝えたくて応募しました。
猫家族“チョンまね一家”との出会いは20年前、2002年にさかのぼります。
猫と会った時、私は、脳梗塞で左半身マヒになった母の介護の真っただ中でした。母が倒れたのは介護保険制度が始まる前で、私は仕事との両立に苦労しました。当時の職場に介護休業制度もなかったので、しかたなく離職して、(母を勉強台に)大学で福祉を学びながら在宅介護を始めたのですが、慣れない生活にストレスはたまる一方でした……。
■猫家族を離れ離れにさせたくなくて
介護から4年経った頃、疲れた私は癒やしを猫に求めました。もともと猫好きで、以前飼ったこともありました。裏庭の灯籠(とうろう)のところに餌を置くと1匹の三毛がやってきました。それがチョンまねです。
小柄なので子猫かと思ったのですが、ひもでじゃらしても興味を示さず、「変な猫だねぇ」と母と話していました。でもしばらくすると3匹の子猫を連れてきて、「これから厄介になります」とでも言うように横に並びました。慌てて母を呼ぶと、前の晩に私が“背負い籠”にこぼれ落ちそうなほどの猫を入れて動物病院に行く夢を見た、というのです。