アメリカでは指導体制の細分化が進んでコーチの陣容も充実しており、岡田はそれをアメリカン・トップ・チーム、エクストリーム・クートゥアといった名門ジムでの合宿で体験した。

「もうボクシングはボクシングのコーチ、キックはキックのコーチ、レスリングはレスリングのコーチ、グラップリングはグラップリングのコーチ、柔術は柔術のコーチで、その上でMMAファイターとしてバランスを取るトータルコーディネーターみたいなコーチがいる。それに加えてストレングス&コンディショニングのコーチがいて、管理栄養士さんがいたり、本当にそれぞれのプロフェッショナルが部分部分をプロとして担当してくれるので、そこは専門性というか、その奥深さには敵わないですよね」

 選手が自ら練習メニューを考えたりコーチ役も兼ねる日本に対し、「アメリカは職域をまたがないというか、しっかりプロはプロに任せた方がいいという考えがある」「コーチはプロの指導者に任せて、競技者は競技者としての仕事に集中するみたいな考えがあります」と岡田は言う。

「今は日本人選手がなかなか世界で勝てていけないですけど、その責任を選手だけに押し付けるのはちょっと酷かなと個人的に思います。選手が頑張っていないとか努力していないとかいう以前に、体制としてこういう違いがあって、経済的に苦しい選手や、若手もやるべきことはやっているとは思うんですけど、なかなか選手個人の頑張りや創意工夫だけでは限界があります」

 現在のMMAは戦いが個人戦の域を超えたレベルに達している。

「まさに僕がそうだったんですけど、ようやくチャンピオンになってスポンサーがついたりしてお金と時間に少し余裕ができて海外修行に行けるようになった時はもう30代。選手として晩年なんです。ただ30歳を過ぎた晩年の選手って、UFCなんてほとんど契約してくれない。ようやく日本で実績を積み上げてお金とかに余裕が出てきたとしても、そうなったらタイムリミットなんです。でも本当に世界で勝てる日本人選手を育てたいと思ったら、若い時にこそ、そういう練習環境に飛び込んだり、プロの指導を受けなければいけない。だけど受けるべき時にはお金もなく日々の生活で精一杯、なかなかそういうところに飛び込めず世界的な日本人選手が育っていかないっていう、悲しい矛盾をいま日本格闘技界は抱えているんです」

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日本人が世界で勝つためにとるべき行動