アンケートをもとに取材すると、大きく三つのことが浮かんだ。一つ目は安倍氏の支持が厚いのは若年・都市部であること、二つ目は歴代首相でみれば安倍首相より田中角栄元首相への共感が高いこと、三つ目は衆院の小選挙区が嫌悪されていることだった。
一つ目の安倍氏の支持構造について分析していく。地方議員の年代別の投票先をみると、安倍氏への投票は40代以下は14人中13人と93%にのぼったが、50代になると30人中18人と60%に低下。60代(85人)になると、石破氏が52%と逆転し、70歳以上(64人)でも石破氏が55%を得た。
衆院の選挙区別にみると、人口が集中する県庁所在地の松山市がある1区を地盤とする地方議員は安倍氏に投票したとの回答が特に多く、一方、農林漁業が中心産業の4区では石破氏が上回った。都市部・若手の議員が安倍氏を、地方・高齢の議員が石破氏を支持する傾向が明確だった。安倍氏に投票した地方議員の肩書を見ると、県議が16人中12人(75%)、市議が115人中66人(57%)、町議が62人中23人(37%)となった。
県議と市町村議の間に一つの分断がある。かつて取材した東日本の県議の言葉を思い出す。市議時代は自民党員のまま無所属を貫いたが、県議にくら替えする際に自民党公認になった経緯について、「県議選は政党選挙になる。それに県議は、日常的な陳情とかで国会議員や各省庁との関係が出てくる。自民党を名乗っている方が何かと有利だ」。
県議になると、党本部に呼ばれたり、国会議員と直接やりとりしたりする機会が増え、「党人」としての意識が高まる。現職の首相として「選挙の顔」である安倍氏への忠誠心が、県議になると強まるということだろう。
■「角栄」支持の背景に疲弊する地方
アンケートでは、歴代で最も評価する自民党総裁について尋ねた。有効回答を得た214人のうち、田中角栄元首相を選んだのは79人(37%)。当時現職だった2位の安倍氏と回答した38人(18%)を大きく引き離した。総裁選での投票先で安倍氏を選んだのは若年・都市部という傾向があったが、この設問も同様で、衆院1区の地方議員は田中、安倍両氏を選んだのは同数、40代以下でも田中氏と安倍氏はほぼ並んだ。