■海賊グッズ販売も再燃
こうしたなか、日本での反響を伝える記事では「日本では引退報じた新聞紙が定価の70倍に」(京報網)と、フリマアプリなどで羽生グッズが高騰していることが紹介されたが、すでに中国国内でも同様の現象が起きているようだ。中国事情に詳しいライターの広瀬大介氏が語る。
「4~5月に日本で開催された『羽生結弦展2022』の公式グッズが高値で売買されていたSNS型のECアプリ『RED(小紅書)』をみると、引退を報じた日本のスポーツ紙に多数の購入希望者が殺到していました。関連グッズも高騰しており、クリアファイルなどは1枚5000円ほどになっているものもありました。以前から、キーホルダーなどの海賊グッズも中国ECサイトに数多く販売されていますが、それらも引退を機に出品が活発化しているようです」
ちなみに今回の引退に際し、国営メディア「中国新聞社」は「羽生結弦の名前の商標登録申請 ほとんどが申請却下へ」と報じており、中国国家知財権局は中国企業による“横取り”ともいえる商標申請を認めない方針のようだ。
中国でこれほどまでに羽生人気が高まっているのはなぜか。ジャーナリストの周来友氏はこう述べる。
「以前から、氷上のパフォーマンスに加えて、中国にはあまりいない、色白で繊細そうなルックスがとにかく『かわいい』ということで20~40代の女性たちから熱狂的に支持されていました。その後、北京五輪で羽生選手の人となりが多くの中国人に知れ渡ることになり、ファンがますます増えていったのです。もうひとつ重要なポイントは、『政治色がない』ところでしょう。政治的なコメントをせず、中国寄りでもなく、日本寄りでもない。そうした中立的なところが“純粋なアイドル”として中国人に受け入れられているように思います。今後、プロとして中国での公演も期待されていますが、政治状況に左右されず、民間レベルで日中間のコミュニケーション促進に期待したいですね」
プロになっても、まだまだ中国での人気は衰えそうにない。(山重慶子)