1年次で必要な単位がほぼ取れたので、2年次には朝9時からの通常勤務に戻った。授業は金曜日だけだが修士論文の準備が大変だと下村さんは話す。
「文献を収集し、たくさんの情報から必要なものを拾い上げて論理的に構成することが求められます。論文指導の木村真生子先生からは、論理的な考え方や広い視野を持つためのヒントをいただいています。修士論文に何年もかかる人もいると聞くので、早めに進めるようにしています」(同)
たまに大学時代のバンド仲間と集まり、キーボードを弾いたりするひとときが唯一の息抜きだ。
「レポート1本書くだけでも資料調べから始まり時間がかかります。私の場合は会社に支援してもらえるので感謝していますが、そうでないとメンタル面も含めてかなり大変です。それでも苦労しただけ力がつき、視野が大きく広がります。若いうちに大学院に行くことは、仕事やキャリアに必ず生きてくると思います」(同)
下村さんが学ぶ筑波大学大学院の法学学位プログラムは、社会人専門の博士前期及び後期課程の大学院だ。木村教授は下村さんを、「開示制度を研究しているとても真面目な学生です。株主総会などにおける情報開示が、経団連や全国株懇連合会の書式をもとに画一的に行われる傾向があり、株主や投資家のためにならないのではという問題意識を持っています」と評価する。
木村教授は1年次から論文作成について相談を受けながら、仕事と大学院生活の両立のためにワークライフバランスもアドバイスする。2年次になると論文執筆のスケジュールを立て、下書きの添削をし、参考文献を示すなどしてサポートする。
法学学位プログラムの定員は33人で、仕事がきっかけで学び始める人が多い。
「私自身も契約書作成の業務をしていて、法律を体系的に学んで仕事に生かそうと考えて大学院に入りました。仕事に自信が持てるようになるとともに法律の世界がおもしろくなり、修士論文の指導教授に勧められて博士号も取り、今は教える側になっています」(木村教授)