――政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は11日、第7波の行動制限について「今の段階では必要ない」との認識を示した。

長崎大の森内浩幸教授(本人提供)
長崎大の森内浩幸教授(本人提供)

私も現時点で若い人たちの行動制限はいらないと考えている。しかし、若い人の中でも、高齢者や抗がん剤治療などで免疫力が落ちている人と同居している人は、できるだけウイルスを持ち帰らないほうがいいし、何かのイベントで若い人と高齢者が一緒になるのは危険だ。

行動制限をする必要があるなら、地域ごとに目的と出口をちゃんと設けるべきだ。例えば、重症化する可能性の高い人たちを守るため、この地区で60歳以上の方の4回目のワクチン接種率が80%に達するまで、などと明確にすべきだ。

――医療のひっ迫から行動制限を検討している自治体もあり、厚生労働省の専門家会合では「緊急事態宣言を検討すべき時期ではないか」との声もある。

今のところ重症者の病床はあまり埋まっていないが、今後、増えていく恐れはある。コロナで救急車を使う人が殺到しているため、病院への搬送時間も延びてきている。コロナ以外でも心筋梗塞や脳卒中はどれだけ早く治療できるかが重要になるが、それに間に合わなくなってくると助かるはずの人が助からない、重い後遺症を残してしまうということになってしまう。そういったコロナ以外の病気や、緊急事態宣言で経済的に困窮したことによる抑うつ状態や自殺も含めて、総合的に健康被害と捉えなければならない。がむしゃらな行動制限はいろんな意味合いでマイナスだ。

医療崩壊につながるような混乱を避けるためには、夏休み中の学校の体育館を使ってコロナ専用外来を開き、開業医がローテーションでそこで対応に当たるなど、国と自治体と医師会が協力して、本当に治療が必要な重症の患者さんを診られるシステムを考える必要がある。日本ではかかりつけ医の多くが雑居ビルの中にクリニックを持っていることもあり、感染対策が取れないことから、なかなかコロナの診察を受け入れられない現状があるからだ。

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