精霊流し
精霊流し

○お中元の始まりも盂蘭盆

 他にも有名なお盆の行事として、毎年8月16日に行われる京都の五山送り火、長崎をはじめとした各地で行われる精霊(灯籠)流し、またお中元の習慣も「盆礼(里帰りなどの際に持ち帰る手土産)」が始まりと考えられている。お盆というのは、何もかもがないまぜとなってしまっているとても日本的な行事ではないだろうか。

○お盆とお墓参りの関係は

 ちなみにお盆にお墓参りをするというのも独特である。と言うのも、仏教における墓参りは、命日やあの世とこの世が一番近くなる日・お彼岸にされるものでありながら、日本ではお盆の行事のひとつともされている点。また、日本においても、お盆の時期の墓参は仏教以外の宗教ではあまり行われない。加えて昨今の猛暑の影響から、お盆のお墓参りは命の危険が伴うようにもなり、一人でのお参りは避けて欲しいとの注意もでる始末で、今ではお盆と墓参りをセットと考える人は少なくなってきているのかもしれない。

○ご供養が意味する5つのもの

 それでも宗派によっては、お寺で灯篭を流すなどの「送り火」行事が行われることもあり、自宅でのお盆行事だけでなくお墓まで出向くこともあるだろう。それでは最後にお供えについて考えてみよう。よく「ご供養」などと呼ばれる供えものは、仏教では「五供」を意味する。香・花・灯燭・浄水・飲食という5つの供え物を指すが、例えば、香=線香、花=切花、灯燭=ローソク・灯籠等、浄水=お水、飲食(おんじき)=食べ物、と考えればよい。これは先祖が餓鬼に落ちず、道に迷わずあの世へ旅立てるように、という気持ちを表している。

○沖縄とハワイの墓参りは似てる

 奄美・沖縄のお盆は今でも旧暦にしたがっていて、今年はほぼ新暦のお盆と重なっているが、年によっては9月にずれ込む年もある。狭い日本でも各地さまざまであるお盆という不思議な行事であるが、沖縄ではお墓参りも一風変わっている。お盆に墓参はせず、独特の供物を持ち寄り、お墓の前で宴を行い食事を皆で楽しむというものなのだ。海外では、墓の前で宴を行う国は多く、まるでピクニックのような形になるハワイの墓参りととても似ている。

 近年、墓参の代行業者も増えてきた。不思議の国・ニッポン。アンケートを取ると6割以上が無神論と回答する国でありながら、先祖を敬い、霊や天をどこかで信じている人間の集合体である。お墓を蔑ろにできず、お守りを切り裂けない(捨てられず持て余す)人たちに、今年もまたお盆休みがやってくる。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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