お盆の供物・「精霊馬」と「精霊牛」
お盆の供物・「精霊馬」と「精霊牛」
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 会社勤めの人たちにとって、カレンダーにはなくともお休みとなるのが「盆休み」ではないだろうか。ほとんどの会社では8月13日~16日、全休にできない企業などは「この付近を交代で」という感じで夏季休暇を取るのだろうと思う。この「盆休み」の風習は、日本独特の文化で、古代から続く祖先の霊を敬ってきた信仰(先祖祭祀)と仏教が習合した結果、誕生したものである。

○先祖祭祀と仏教が日本で習合

 先祖祭祀は、アフリカや南アメリカ、東アジアなどに多く残っているが、日本においての起源は縄文時代にさかのぼれるのだという。一説によれば、日本にキリスト教が広く浸透していかなかった理由のひとつに、この祖霊信仰があるとも言われている。先祖を供養することで一族を守護する神々になるとして崇めてきた人々にとって、一人の神のみが存在する教えは受け入れ難かったのだろう。

○先祖が餓鬼にならないようにと供物を

 仏教が渡来する以前から、日本には夏に祖先の霊を祀る儀式があったと考えられている。これに仏教の「盂蘭盆」という行事が重なり、いつしか「お盆」と呼ばれるものとなった。盂蘭盆については原稿1本分くらいの内容になるので今回は省くが、元々は餓鬼道に落ちた母を救う僧の話に由来したものである。中国でも道教と習合した形で現在に至っている。盂蘭盆は旧暦の7月15日に行われてきた施餓鬼(せがき/食べ物を備えて供養する法会)を指し、この日を中心とした13~16日が盂蘭盆会の期間となった。

○お盆の中での行事

 その後の明治以降の暦の変更から、現在の暦の7月あるいは8月をお盆期間とする地域が分かれた。東京などの都市部では7月に盂蘭盆会を行うお寺が多いが、全国的にはお盆休みと重なる8月が盂蘭盆としている地域の方が多数のようである。お盆が4日あることの意味もあり、まず13日に家に戻ってくる先祖を迎えるための「迎え火」を焚く。14・15日は先祖が滞在しているので、食べ物などのお供えをし、16日は送り火を焚いてあの世に送り出すのである。

○お盆と踊りはセット

 それでも霊は恐いので、お面などをつけ顔を隠したり、剽軽たりしたことが、送り出しの前日夜に行われる「盆踊り」の元となったとも言われている。この盆踊り、今では世界中に移住した日本人たちによって広がった夏の風物詩となっている話は以前の稿でご紹介した通りだ。盆踊りとは流れは違うが、阿波踊りやよさこい、ソーラン祭りなどお盆には全国で踊りまくりの行事が繰り広げられ、この季節の風物詩となっている。

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