前評価の低さは、開催国のために予選が免除されたこと、強豪国との対戦経験のなさ、代表全選手が国内組であるということなどに起因する。ただ、2021年に開催されたアラブ杯ではエジプトに0対0からのPK勝ちで3位。今年に入ってからの親善試合でも、ブルガリアに2対1、スロベニアに0対0、モロッコに2対2。そして直近、8月23日に行われたガーナ戦は2対1で勝利を収めた。
すでに6月から異例の長期キャンプに突入しており、代表選手たちは8月に開幕した国内リーグ戦には出場せずに代表チームの活動を優先。他国が通常(約1カ月~2週間)よりも短い1週間未満の準備で大会初戦を迎えることを強いられる中、カタールは約半年という“反則的な”時間をかけてチームの連携を深めて万全の準備を整えている。未知数な部分は多いが、開幕戦のエクアドル戦での勝利から波に乗れば、セネガル、オランダと続くグループリーグを突破する可能性は十分にある。
その他、B組(イングランド、アメリカ、ウェールズ)のイランには高い攻撃性能を持つFWアズムン(レバークーゼン)を筆頭に個性豊かな選手が揃い、C組(アルゼンチン、メキシコ、ポーランド)のサウジアラビアはカタールの隣国という地の利を生かせる。D組(フランス、デンマーク、チュニジア)のオーストラリアには過去の経験と勝負強さがあり、いずれもグループリーグ突破の難易度は高いが、サプライズを起こせる力があると信じたい。
次回の2026年W杯からは出場チームが現行の32から48に拡大されることに伴い、アジアの出場枠が「4.5枠」から「8.5枠」に増加されることが決定したが、現状では「多過ぎる」、「金儲け優先」と揶揄する声が多い。その“汚名”を少しでも返上するためには、アジア勢が目に見える結果を出さなくてはならない。同じく「5枠」から「9.5枠」に増加するアフリカ勢との優劣も評価の対象になる。2002年日韓大会以来のアジア開催で、アジア勢が再び力を証明することができるか。もちろん日本代表にも、その責務がある。(文・三和直樹)