朝日ジャーナル1987年2月27日号
朝日ジャーナル1987年2月27日号

 午後1時、勇壮なマーチの演奏とともに開かれた式典は、奥原唯弘「祝う会」常務理事が「開式の辞」をのべ、『君が代』斉唱に続いて五島昇代表理事が「主催者式辞」をのべた。

 式典は、そのあと来賓祝辞へと移った。最初に壇上に立ったのが中曽根首相。昨年の祝辞で「旺盛な愛国心」を強調したのに比べると、当面の政策課題にふれるなどトーンは落ちている。

 その後、衆院議長、参院議長などの祝辞が続き、なかでも目を引いたのが、一般代表として壇上に立ったタレントの森田健作氏と歌手の中尾ミエ氏だった。

「スパイ防止法制定の必要性を訴えてきた青春の巨匠モリケン」(勝共連合の機関紙『思想新聞』)、こと森田氏は、胸を張り高らかな声で「愛国心を失ってはならない」「日本は青春の国だ」と強調した。

「こうしたところに招かれたのははじめて」という中尾氏は、建国記念の日を「日本人がこぞってお祝いしないのは不憫な気がする」「じっくり時間をかけて国民みんなで祝えるよう頑張って下さい」と語った。

 休憩をはさんで午後2時から始まった第2部は、狂言師の野村万作氏らのイベントで構成されていた。

 そして式典の最後に行われたのが、万歳三唱だった。壇上には幼稚園児はじめ参加者が勢揃いし、その中に中曽根首相や五島氏らが立った。

 ここで西郷輝彦氏がマイクの前に立ち、「幸せな国にいることにありがとうを言いたい」とのべたうえで「日本国の建国を祝し、天皇陛下の更なるご長寿を祈り世界の平和と繁栄を祈って」万歳三唱が行われた。

 式典参加者は約1700人。閣僚の参加者は、昨年の17人に対し、今回は首相をふくめ11人と欠席が増えている。

 106カ国の外交官(大使)出席予定のうち、参加したのは27カ国にとどまった。

 野党からは、民社党代表として柳沢錬造参議院議員が参加し、公明党国民運動本部からは祝電が寄せられた。

 なお、恒例となり今年の式次第でも予定されていた祝電披露は、なぜか急遽とりやめとなった。ちなみに、今年の祝電は公明党本部のほか、数人の自民党代議士から寄せられていた。

「国民の祝日を祝う会」で
決定的亀裂へ

 式典を準備した財団法人「国民の祝日を祝う会」は、昨86年3月15日に設立された。そして役員には代表理事に稲山嘉寛経団連名誉会長、五島昇日商会頭、常務理事に奥原唯弘近畿大学教授が就任した。

「祝う会」は、1年間に12日ある、法で制定されている国民の祝日の意義を啓発することを目的に設立され、その事業内容として「日本国旗の掲揚推進運動」などをうたっている。

 形の上では憲法記念日までも評価するという新しい「祝う会」の登場は、この数年間、亀裂を深めていた奉祝派の間の対立を決定的なものにした。

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