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小学生のときからテレビやラジオ、映画などで活躍してきた石山蓮華さん。そのかたわら、電線に魅力を感じ、カメラに収めてきた。これまでに写した作品は1万5000枚以上にもなる。
日本の風景の一部となっている電線。あまりにも見慣れすぎていて、その存在を意識する人は少ないだろう。だが石山さんは電線を「かっこいい」と感じ、レンズを向ける。その行為を「目で触る感じ」と、説明する。
「本当は電線に触りたいんです。でも、触れないからカメラのレンズで寄る。寄ると電線の質感が見えてくる。目で触りたい」
さらに「電線を見ている時間が写真として記録されている感じ」とも語る。
そのまなざしは漠然としたものではなく「観察する目で」と言う。電気を送る高圧線と低圧線、インターネットなどの信号を送る通信線、電線と変圧器をつなぐケーブルなど、電柱にはさまざまな種類の電線が取り付けられている。石山さんはその1本1本を観察する。たるみやテンション、巻き具合、接続部分を覆う絶縁テープまで。
「よく見ると、電線の末端を丸める処理をきっちりとやってあるものがあれば、比較的ざくっとしたものもある。テープの貼り方ひとつにも電気工事士のくせが出る。電線ってすごく無機質なイメージがあるけれど、細かく見ていくと、人間がつないだ手の跡みたいなものが見えてくる。それがすごく面白い」
■グロテスクな絵が好きだった
初めて電線を意識したのは小学3年生のころ。東京・赤羽にあった父親の仕事場の近くをよく散歩した。路地が多く、道幅が狭いぶん、電線が圧縮されて見えて、迫力があった。
そのころから「ダーティーな世界とメカ、うにょうにょしたものが気になっていた」と言う石山さん。電線はそれと響き合う感じがした。「いいなあ」。その思いを「漫画のようにお絵描きした」。
好きな漫画やアニメは士郎正宗の「攻殻機動隊」や押井守の「イノセンス」。
宮崎駿の「もののけ姫」にも親しんだ。特に好きなキャラクターは「冒頭に出てくるタタリ神」。「全身が黒い触手に覆われて、うにょうにょしている」ところに魅了された。
香港・九龍城を舞台にしたホラーゲーム『クーロンズゲート』(ソニーミュージックエンターテインメント)にもハマった。
「グロテスクな絵がすごくかっこよくて、好きだった。人間とメカがくっついたような画像をインターネットで探して、ひたすら集めたりしていました」