
写真を撮り始めたのは小学5年生のころ。芸能事務所に入った際「ブログをやったらどう?」と、勧められたのがきっかけだ。
「ブログって、写真を載せるじゃないですか。それで、ケータイで身近なものを写すようになった。葉っぱとか、クモとか」
高校に入学すると、写真部に入った。
「卒業後は写真学校に行くことも考えて、写真家の人に相談したこともあったんです。でも、写真は大人になってからでもできるな、と思ったのと、何かつぶしのききそうなことを勉強したいなと思って大学に進学した。専攻は社会学です」
■電線は血管や神経のよう
大学時代は一眼レフを下げて街を歩いた。
「秋葉原に行くと、店先にジャンク品のケーブルが置いてあるじゃないですか。それを『寄り』で撮っていました。電気街のパーツ屋さんをのぞいて『ああ、かっこいいな』と思ったりした」
当時、石山さんは日本テレビの朝の情報番組「ZIP!」に出演していた。
「セットの裏にすごい電線(配線)があるんですけど、それを見るのがとても好きだった。こっそり、触ったりした。この仕事は6年続いたんですけれど、次第に同期がいなくなると現場で話す友だちがいなくなってしまった。心がふさぎ込んでくると、気持ちがどんどん電線にいっちゃった」
無機質な電線を見るたびに「生きものっぽいな」と思った。それが血管や神経のように感じられた。

電線ばかりを意識して撮るようになったのは6年ほど前。それまではなんとなく電線を撮るのが好きだったが、「技術的な向上心はあまりなかった」。ところが手持ちの焦点距離の短いレンズでは「電線の見たいところが写らない」ことに不満を覚えるようになった。
パナソニックのコンパクトデジタルカメラを手に入れた。「軽くて、望遠ズームで寄れて、予算内」だった。
「このカメラを買ってから『うわっ、撮れる!』と思った(笑)。ちっちゃいんですけど、レンズがガッっと伸びるから電線にめちゃくちゃ寄れる」と、うれしそうに語る。
手のひらサイズのカメラを見せてもらうと、「これは2台目なんです」。最初に買ったカメラは「扱い悪くて」壊してしまい、まったく同じカメラを購入した。