今回、取材に応じた日本基督教団白河教会の竹迫之牧師
今回、取材に応じた日本基督教団白河教会の竹迫之牧師

「数日後、入試結果の発表を見に行ったら、落ちていた。池袋に遊びに行こうと思ったら、雨が降り出した。行く当てがなくなってしまった。そういえば月額2500円で映画が見放題になるサークルがあったなと思い出して、電話して、ILAを訪れた」

自分も同じことをやった 

 ILAは「サンシャイン60」の近くにある貸しビルの中にあった。そこは「本当に喫茶店みたいな雰囲気」で宗教っぽさを感じさせるものは何もなかった。喫茶スペースの奥にはビデオブースが設けられ、それぞれ独立したテレビとデッキでビデオが見られるようになっていた。ビデオを見終わると、喫茶スペースでスタッフと雑談をした。

「ぼくの話をとにかく聞いてくれたんです。だから、自分のことをどんどん話してしまう」

 特に、小学生のとき事故で視力を失った左目のことについてじっくりと話を聞いてくれたことが心にしみた。それまで他人に話してもわかってもらえないと思っていたことを初めて受け止めてもらえたと感激した。大きな善意を感じた。

「しかし、それは一度足を踏み入れた組織をやめるにやめられない状況に追い込んでいく常套手段だったのです」

 なぜ、そう言えるのか?

「自分も誘う側になると、同じことやっていましたから……」

 ILAに入会すると、昼間は予備校に通い、夜はILAでビデオを見る生活が始まった。

 合宿もあった。最初の合宿で自分の長所を挙げながら自己紹介すると、熱烈な拍手で盛り上がった。参加者は互いを褒めたたえた。ひたすらいい気分になった。

 しかし、そこには仕掛けが隠されていた。参加者のなかにはたくさんの信者、つまり、「サクラ」が潜り込んでいたのだ。やがて竹迫さんもその一人となる。

韓国の老人の姿に衝撃

 ILAのスタッフはさまざまな場面で「人生の転換期」を語った。これこそが、旧統一教会に引き込むための典型的な手段で、いわゆる「転換期トーク」と呼ばれている。

「いま『人生の転換期』を迎えているんじゃないですか、って言われると、だいたいみんな、心当たりがあるものなんです。ぼくもちょうど受験のときだったから、確かにそうだよな、と思った」

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現役東大生の学生部長