なぜ、いまもなお世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入ってしまう人が後をたたないのか。「大半の人はそれがどういう団体か、まったく知らないまま誘い込まれていく」と、日本基督教団白河教会の竹迫之(たけさこ・いたる)牧師(55)は話す。実は、竹迫さん自身も旧統一教会の元信者だ。脱会時には兄弟姉妹のように親しかった仲間たちから「裏切り者」と見なされ、暴行や脅迫を受けた。現在は世界平和統一家庭連合から脱会を望む人たちの支援を続ける竹迫さんに、当時の実体験を語ってもらった。
※記事前編 <<旧統一教会「元信者」の現役牧師が告白「ハンカチ売り」と「ギョウザ寝」の苦行 忘れられない1本の印鑑>>から続く。
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「別に旧統一教会に入ろうと思って入ったわけではないんです。ぼくの場合『月額2500円で500本のビデオが見放題ですよ』と誘われて、サークルに通い始めた」
竹迫さんは、そう語る。
1985年の春。それは大学受験が終わった日だった。
「きっと散々な結果だったに違いない」と思いながら、竹迫さんが東京・池袋駅前を歩いていた。
「こんにちは」
雑踏で突然、声をかけられた。
「あまりにも親しげだったので最初は知り合いかな、と思ったんです。初対面だとはしばらく気がつかなかった」
後で知ったことだが、アンケート調査と称する勧誘だった。しかし、このときはまったくわからなかった。
「最初はキャッチセールスだと思って、ちょっと警戒したんです。いろいろ聞かれたので。『今、何しているんですか?』『受験の帰りです』『受験って、どこ?』『日大の芸術学部です』『なんで芸術なの?』『映画を撮りたいから』という具合にどんどん話を引き出された」
しばらく会話した後、相手は「池袋ライフアカデミー(ILA)」という、映画をみんなで鑑賞しながら人生の勉強をするサークルなんです、と切り出した。そして電話番号を記したカードを手渡した。