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 今回の感染症対策でもそうでしたが、日米地位協定の問題は日々の生活と密着しています。基地周辺で高濃度のPFOSが検出されても、自治体の基地内への立ち入り権が確保されていないので、原因究明が難しい状況です。軍人・軍属被疑者の起訴前の身柄問題もそうです。

 地位協定では、公務外の事件・事故の場合、裁判権は日本側にあるが、被疑者が米側に拘束された場合、日本側が起訴するまで米側が身柄を拘束する、とあります。1995年の少女暴行事件でも米側が身柄の引き渡しを拒み、反発が強まりました。そこで日米合同委員会は当時、「殺人または強姦という凶悪な犯罪」について日本側からの要請に米側は好意的な考慮を払う、と合意しました。しかしその後も米側は明確な理由を示さないまま身柄引き渡しを拒否するなど、実際の実効性は米側の裁量に委ねられています。

「好意的な考慮」とはいったい何でしょうか。

 事故の時もそうです。オスプレイやヘリ墜落などの事故が発生すると、直ちに規制線が敷かれ、日本の消防や警察も中に入ることができません。すべてが米軍の管理下に置かれてしまうのです。ここは日本国であるにもかかわらず、です。日本の主権は、いったいどこにあるのでしょうか。日米地位協定には、沖縄県民だけでなく、日本国民全体に対する抑圧的な構造があります。

 沖縄県は2017~19年度にかけて、米国との地位協定について、各国の状況を調査しました。(1)米軍受け入れ国の国内法の適用、(2)基地の管理権、(3)訓練や演習に対する受け入れ国の関与、(4)航空機事故が起きた場合の対応――の四つの観点を比較したところ、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスや、米軍を訪問軍として受け入れるフィリピン、オーストラリアでは、航空法などの自国の法律や規則を米軍にも適用させ、米軍の活動をコントロールしていることが分かりました。日本と違って、それぞれの国が主権を保持しながら、米側に基地を貸しているわけです。

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なぜ日米地位協定は改定されないのか?