■40分にわたってじっくり話を聞く

 電話相談は、火・木・金の9時から15時まで。摂食障害病棟で働いた経験があり、患者の気持ちを理解し、医療的な助言もできる専門コーディネーター(看護師)が対応する。摂食障害の本人だけでなく、家族、学校関係者、医療や福祉専門職からの相談も受け付ける。適切な回答につなげるため、摂食障害当事者の基本的な情報(年齢、身長、体重など)は聞き取るが、匿名で相談できる。主に病気の情報や対応の仕方、受診先を助言するが、「まずはじっくり話を聞くことが大事」と河合医師は言う。

「患者さんは心の問題を抱えていて学校に居場所がないと感じていたり、異常な食行動を家族にとがめられて家庭内でも孤立していたり、つらい思いをしていることが多いんですね。一方、家族も心配して本人に受診を勧めても拒否されるなど、どうしていいかわからないでいます。1人40分ほどかけて話を聞くこともあり『そんなことがあったのですか』『つらかったですね』などと共感した上で、困っていることに対して適切なアドバイスをするよう心がけています」

 開設時(1月11日)から6月末までの相談件数は389件。2月以降は毎月70~80件で推移している。相談者は本人が32%だったのに対し、家族は62%でそのほとんどが母親だった。

国立国際医療研究センター国府台病院心療内科提供
国立国際医療研究センター国府台病院心療内科提供

 摂食障害にかかっている当事者の状況は9割以上が女性。年齢層は多い順に10代39%、20代27%、30代15%と、若い世代に集中している。また7割は拒食症で、やせの状態が最重度(BMIが15未満)と重度(同15以上16未満)が全体の半数近くを占めていた。相談内容は、「受診先の相談」が40%、「病気について」が38%、患者にどう接すればいいかといった「対応」が19%だった。

国立国際医療研究センター国府台病院心療内科提供
国立国際医療研究センター国府台病院心療内科提供

「予想外だったのは、受診経験がある人が多かったこと。未受診患者は22%だったのに対し、受診経験がある人は『受診中』と『中断』を合わせると57%にのぼり、それ以外にも20%がうつや依存症など他の精神疾患で通院中でした。この病気の治療が難しいことのあらわれだと思いますが、病院とつながっていながら治療がうまく進んでいなかったり、何らかの事情で治療が中断していたりする患者さんが多く、対応が必要なことに気づかされました。患者さんと治療者双方の意見のくい違いをどう埋めるかがポイントです」(河合医師)

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