摂食障害(拒食症・過食症)は10~30代の女性に多く、医療機関を受診する患者は年間約22万人。しかし未受診の潜在的な患者や予備群はその何倍もいると考えられている。
そこで国立国際医療センター国府台病院(千葉県市川市)は早期治療につなげるため、2022年1月に本人や家族などからの電話相談に応じる「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」を開設。6月末までに寄せられた相談389件を分析したところ、摂食障害で医療機関に受診経験がある人が6割を占めていたことがわかった。
同院心療内科科長の河合啓介医師は「病院とつながっていながら治療がスムーズに進んでいなかったり、何らかの事情で治療が中断していたりする患者さんが多い」と話す。
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■約5%の高い死亡率、適切な治療につなげることが不可欠
摂食障害は、食行動異常を中心にさまざまな問題を引き起こす精神疾患だ。ダイエットをきっかけに発症することが多く、「神経性やせ症(拒食症)」と「神経性過食症(過食症)」に分けられる。
拒食症は極端な食事制限などで体重を落とすことに固執し、明らかにやせているのに「まだ太っている」と思い込んでやせ続ける。栄養不足に陥ると生理が止まったり成長に影響が出たりするだけでなく、命を落とすこともある。衰弱や合併症、自殺などで患者の約5%が死亡しており、精神疾患の中で最も死亡率が高い。
一方、過食症は食欲をコントロールできず、無茶食いをする。食後は激しい自己嫌悪に陥り、過食をなかったことにしようと嘔吐や下剤の乱用などの「代償行為」をおこなうのが特徴だ。食べ物を調達するためにお金がかかったり、万引きをしたりするなど、生活面に悪影響が出ることも多い。体形は正常範囲なのでつらい状況が周囲に伝わりにくく、拒食症とは違う苦しみを抱えている。
いずれも根底には強いやせ願望と肥満への恐怖があり、拒食症と過食症を行き来することも少なくない。河合医師はこう説明する。