国立国際医療センター国府台病院心療内科科長の河合啓介医師
国立国際医療センター国府台病院心療内科科長の河合啓介医師

摂食障害は、心の不調が異常な食行動という症状となってからだに表れる心身症の一つです。見た目の問題と捉えられがちですが、もともとの性格や環境(家庭の問題や進路の悩みなど)、対人関係、大きなストレスとなる出来事など、さまざまな要因が関与して発症します。そのため、低体重や合併症の改善といった『身体的な治療』に加え、『精神面の治療』も不可欠です」

■拠点病院がない地域の人を電話相談でサポート

 できるだけ早く治療を始める必要があるが、本人に病気の自覚がなかったり、肥満に対する恐怖から「病院に行ったら無理やり太らされる」などと考え、受診に抵抗を示したり、受診を中断してしまうケースが多い。

 また、摂食障害に詳しい医師は少なく、専門的な治療を受けられる医療機関が限られていることも大きな課題だ。現在、宮城県、千葉県、静岡県、福岡県には、厚生労働省が「摂食障害支援拠点病院」に指定した病院があり、治療はもとより各県内や近県在住者の相談に応じ、医療機関につなぐ役割も果たしている。国府台病院も含めたこの4病院は2015年にモデル事業として指定を受けていて、その実績を踏まえ、ほかの自治体にも拠点病院が増えていくことが期待されてきた。ところが、設置要件や業務の負担増、予算の確保が難しいなどさまざまな理由で現在に至るまで全く増えていない。

「その結果、拠点病院から離れた地域に住む人はどこに相談や受診をすればいいのかわからないなど、情報の地域格差が生まれています」(河合医師)

 国府台病院は、こうした格差を少しでも解消し、早期受診につなげるため、拠点病院のある4県以外に住む人を対象にした電話相談窓口「摂食障害全国支援センター・相談ほっとライン」を開設。2022年1月11日から運用を始めた。

「当院はこれまで千葉県の拠点病院として毎月40~50件の電話相談に応じてきているので、ノウハウはある。電話であれば、どこに住んでいようと気軽に相談ができます。まずは来院よりも垣根の低い電話相談で正確な情報や医療につながる機会を提供したいと考えました」(河合医師)

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