運営元のサイバーエージェントに2月に問い合わせたところ、「定義の難しさから、情報の真偽を判断基準とした記事削除は行っていない」とのことだった。社会的な責任が高まるプラットフォーマーとして果たしてこれでいいのか、疑問が浮かぶ。
日本にも浸透したQアノンとは何か。信奉者はどんな人たちなのか。そして、Qとは誰か。
朝日新聞デジタルの連載をもとにした『Qを追う 陰謀論集団の正体』では、それらをできるだけ丁寧に書こうと努めた。日本のインターネット空間において、Qアノン側の陰謀論があまりにもあふれすぎており、それに対抗できるような事実を提示したかった。
もちろん、そうした試みを快く思わない人たちもいる。
私のツイッター(@fujiwara_g1)には、「メディアは洗脳装置」とか「印象操作」とか「ニュルンベルク法で有罪になる」とか、そういったコメントが寄せられた。彼らのアカウントを見てみると、ほとんどが「QAJF」という日本のQアノン関連団体へのシンパシーを表明している。
これは「Eri(エリ)」という仮名を使う女性がつくった団体だ。エリは日本のQアノン現象を考える上で最も重要な人物の1人で、団体のSNSに登録しているメンバーは5千人近くいる。
私は、彼女たちの投げかけてくる攻撃的な言葉に反論しようとは思わない。彼女たちは、自分たちが「真実」の側にいると思い込んでいる。Qの信奉者であることを一種のアイデンティティーにしている。どんな言葉をかけようとも、なかなか響きづらい。
では、放置すればいいのだろうか。そう言ってもいられない。「家族がQアノンにはまって、苦しんでいる」。そんな声を取材でたくさん聞いた。米国では、5人から6人に1人がQアノンの主張の柱を信じているという世論調査がある。
私やあなたの、すぐそばにいる大切なひとが、あすにも、陰謀論というラビットホール(うさぎの巣穴)にはまってしまうかもしれない。そして、そこから抜け出せなくなるかもしれない。