自民党プロジェクトチームによる「生殖補助医療の規律に関する立法」のたたき台を読んだ。おどろくほど、そこには代理出産をする女性の健康については一切触れられていなかった。徹底的に依頼者目線(子どもが欲しい人目線)の議論であり、誰がどのように仲介し斡旋するか、どうビジネス化していくのかが目的になっているものにしか読めなかった。実際に巻き込まれていくのは、若い女性たちだろう。1年間で数百万円を手に入れられるとしたら、そしてそれが人の役に立つことだとしたら……非正規雇用の女性の平均年収が約150万円の日本社会で、それはジュディス・バトラー先生が涼しい顔で言い切るように「代理出産は生計を立てる方法」になっていくだろう。
……でもそれは、本当に、私たちが向かうべき道なのだろうか。
代理出産は長い間、産めない女性を助ける行為、素晴らしい自己犠牲、女性の生殖の自己決定権の行使……などといわれてきた。全て「子どもが欲しい人」目線の安心できる物語であった。だからこそ今、一方的な代理出産の語られ方に警鐘を鳴らし、地道に研究を続けてきた柳原良江氏らの活動に耳を傾けたいと思う。「提供する側」からはどのような世界が見えるのか。女性の体が安易な感動物語、安易な現実論、安易な自己決定論にのみ込まれる前に。