浦和のデモにて。旧統一教会の入っているビル前で手紙を読み上げる(撮影/上田耕司)
浦和のデモにて。旧統一教会の入っているビル前で手紙を読み上げる(撮影/上田耕司)

 ビルの前まで来た。外からビルを見上げても旧統一教会らしき看板は見当たらず、外見上は全くわからない。

 すると、デモ隊の一員がメガホンでビルに向かって、こう呼びかけた。

「旧統一教会のお偉方にお手紙を読ませていただきます。ボランティアに名を借りた特定政党への介入を直ちにやめること。また過去に遡って特定政党との関係を全て公表すること。今までに日本国内で集金した(金銭の)所在と使途を明らかにすること。霊感商法や献金による信者からの集金は、直ちにやめること。信者から脱会の申し出があった場合は、無条件で応諾すること。信者および2世信者から訴えられた訴訟には、誠意をもって対応し返金要求に応ずること。宗教の名をかたった反社会的活動をやめ、今後一切行わないこと。以上のことができないのであれば、直ちに教会を解散することを要求します」

浦和でのスタンディング(撮影/上田耕司)
浦和でのスタンディング(撮影/上田耕司)

「反対」を貫く医師

 デモ隊は次に、さいたま市浦和区の自民党支部の前へ向かった。

 参加者の男性は、こう言う。

「自民党のビルの中は電気がついていましたが、シャッターが閉まっていました。何度かインターホンを鳴らしましたが誰も出なかったので、手紙を入れました」

 そして、こう続ける。

「県内には旧統一教会の関連施設が10カ所以上あります。そして、何人もの国会議員が関係を持っていたことがわかっています。きちんと対応していきたい。いろんな人たちが怒りの声を上げている」

「安倍『国葬』を認めない 埼玉県民の会」の共同代表を務めるのは現役の医師で、埼玉協同病院内科診療部長の辻忠男氏(74)だ。医師がこのような活動をするのはめずらしいのでは?と聞くと、

「国葬に反対している医師は周りにいっぱいいますよ。私は公立病院を65歳で定年後当院に勤務し、今は自由に社会運動に参加しています」

 市民グループの共同代表となり、メガホンを片手に先頭に立ってデモ隊を引っ張っていく。辻医師はこう続ける。

浦和でのデモにて。医師の辻忠男氏(撮影/上田耕司)
浦和でのデモにて。医師の辻忠男氏(撮影/上田耕司)

「多くの国民が反対しても政府は国葬を強行するでしょうね。当初、政府は弔問外交などと言っていましたが、海外からの大物来賓はカナダのトルドー首相とアメリカのハリス副大統領くらいではないですか。私たちは国葬を止めるために、160カ所の在日各国大使館に不参加要請の手紙を送ったり、埼玉県知事、教育長、さいたま市長に公開質問状を送ったりしました。今後もデモや集会で国内外にアピールし、中身のない“スカスカな国葬”にしたい」

 県内61の市教委に「生徒に喪服を強制するな」と要請もしたという。

 デモ隊のコースにもなった旧統一教会について、辻医師はこう話した。

「今、多くの信者は動揺しているのではないでしょうか。マインドコントロールされ、お金を巻き上げられ、家庭崩壊の目に合っている。脱会したい信者には、一日でも早く道が開かれることを願っています。県に総合相談窓口を早急に作るように、強く要請してきたところです。脱会の道は開かれています」

 そして、こう続ける。

「統一教会が骨の髄までしみ込んだ安倍的自民党政治を終わらせ、政治を私たちの手に取り戻したい」

 デモに参加した人たちに話しかけると、会社を定年してパートで働いている人など、デモの間、ずっとマイクを片手にコールしていたのは大宮から来た71歳の女性。ビルの谷間に響き渡るような、元気な声を上げていた。

「#国葬反対」のプラカード

 メディア各社の世論調査では岸田内閣の支持率は下落傾向が続いている。国葬に反対する意見が多数で、旧統一教会と自民党との密接な関係問題も収束の気配は見られない。

 次に、9月10日、東京・新宿駅南口で開かれた集まりに行った。その場所からはファッションビル「新宿ミロード」の看板が見える。集まっている人の多くは、女性だ。

「国葬させない女たちの会」とNPO法人「アジア女性資料センター」が行った集会には、120人が参加した(主催者発表)。女性が7割ほどで、年齢層は幅広い。

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