ヘルソン州での路上での投票風景(Telegramより)
ヘルソン州での路上での投票風景(Telegramより)

――ロシアのプーチン大統領は9月21日、ロシア国民の部分的動員令を発表した演説でウクライナでの「住民投票」に触れ、(投票する人の)安全を守る、と宣言しました。ロシア軍の関与と関係ありますか。

 私は、住民投票を急いだのは、プーチン大統領自身だと思う。ロシア軍を通じて、指示を出したのでしょう。国民の「士気」を高め、「部分的動員」をやりやすくする効果も見込んだはずで、これらは一体の動きとみるべきだ。ロシア軍は当初めざした首都キーウ攻略に失敗。9月にはウクライナ北東部ハリキウ州でウクライナ軍に大敗した。プーチン氏にあせりが生まれたのだと思います。

――やはり「住民投票」があった東部ドネツク州では、ロシア側の「選挙管理委員会」2カ所が爆撃されたと、ロシア国営テレビが9月26日伝えました。実質、「戦場での投票」になったのではないですか。

 ロシア軍の占領地はどこも砲弾が飛び交う戦場だ。南部ヘルソン州でも「投票」期間中の25日、ロシア国家親衛軍が拠点とするホテルがミサイルで爆撃された。戦時なので、ホテルでも軍事拠点なら攻撃が(国際法上)認められる。そのホテルに泊まっていた親ロシア派の元ウクライナ国会議員1人も亡くなった。彼は投票する様子をロシアメディアに撮影させ、ロシアのプロパガンダにのっかっていました。

――ヘルソン州では、ロシア側の「選挙管理委員会」が投票率を76%と発表しました。どう評価しますか。

 占領地の外へ逃げたウクライナ人避難民には「投票」への呼びかけすらない。州都ヘルソン市の場合、30万人中20万人が州外へ逃げた。私自身、ウクライナ西部に逃れ、滞在中だが、私も友人も親類も「投票」について何も知らされていない。「ヘルソン州選挙管理委員会」の代表者は22日、ロシアメディア向けの記者会見で「どれだけの人が投票できるのか」と質問され、「分かりません。それについては沈黙します」と答えた。「投票結果」の数字はフェイクです。

――親ロシア派の「ヘルソン州軍民行政府」はSNSの公式チャンネルで「住民投票」の様子を流していますが、「投票」している人の多くが高齢者で、若者はほとんどいません。なぜですか。

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彼らはどういう生活をしているのか