軍人が見守る中での出前投票(Telegramより)
軍人が見守る中での出前投票(Telegramより)
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 銃を突きつけ投票させるつもりか――。ロシア側が、ウクライナ南・東部のロシア併合を目指して実施した「住民投票」だとする動きが、反発を招いている。現地で何が起きているのか、ウクライナ人記者に聞いた。

【写真】路上で投票?秘密は保障されるはずもない

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「住民投票」だとする活動は、ロシア軍がその一部を支配するウクライナ南・東部4州で、9月23~27日に行われた。「投票用紙」は「ロシア連邦への加盟に賛成ですか」と書いてあり、その下に「イエス」「ノー」のどちらかにチェックを入れる欄がある。その紙を手に、親ロシア派が戸別訪問して、投票を促した。

 4州の一つ、南部ザポリージャ州では、銃を持ち防弾チョッキを着た軍人2人と親ロ派市民3人の計5人がウクライナ人宅を訪ねて歩いた。その様子をアップしたSNSを見ると、軍人はロシアの国家親衛軍の兵士だ。その証拠に、所属を示す「緑と赤の縞の記章」が胸に映っている。ロシア南部、チェチェンから来た兵士であることが分かる。国家親衛軍はプーチン大統領直属の部隊。治安維持を担う。軍服ではない2人はアパートのドアを次々ノックした。しかし、住民が応じる様子はみられなかった。

 このSNS投稿をめぐり、ウクライナ・メディアは「事実上、銃で投票を強制する動きだ」と批判した。

 やはり「住民投票」による「ロシア併合」の動きがある4州の一つ、南部ヘルソン州の記者、オレフ・バトゥーリン氏(43)にオンラインで話を聞いた。

――なぜ、ロシアの軍人が投票にかかわるのですか。

 住民投票は地元では「11月4日」に実施される、と言われていた。それが「9月23日から投票」と20日に突然発表された。ヘルソンでは、その前日までテレビニュースでもいっさい住民投票に触れず、「投票」を訴える街中の看板もなかった。住民投票を実際に仕切っているのはロシアの占領軍だ。発表から実施までわずか3日だったのを見ると、ロシア軍が急に方針転換したのだと思います。

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実質、戦場での投票では?