記憶を左右する3種の神経伝達物質。このうちセロトニンは、食習慣で分泌促進が期待できる。
記憶を左右する3種の神経伝達物質。このうちセロトニンは、食習慣で分泌促進が期待できる。

 脂質以外だと、「タンパク質」も記憶を作り出すもとになるため、必須の要素となる。その材料となるアミノ酸を摂取すること、特に「必須アミノ酸」と呼ばれる、人間の体内では合成できないアミノ酸が重要となる。これらを豊富に含むのが、肉類、魚類、卵、乳製品や大豆などであり、これらをしっかりと摂るようにしていきたい。

 また、ニューロンの唯一のエネルギー源である「ブドウ糖」も適切に補充される必要がある。記憶に関わるニューロンの電気的な活動やそれを支える「グリア細胞」の働きは、ブドウ糖からエネルギーを得ることによって初めて可能となる。糖質制限ダイエットなどが流行っているが、過度に摂取を控えれば、脳に深刻な影響を与え、思考力や記憶力も低下してしまう可能性があるので注意が必要だ。糖質が悪者になるのは、あくまでも過剰に摂取した場合なのである。

 ここまで挙げてきた「脂質」 「タンパク質」 「糖質(炭水化物)」は、3大栄養素と言われるように生命維持における基本的な栄養素だが、記憶においても極めて重要な要素なのである。奇をてらわず、日々の食生活の中でバランス良く摂取する必要があるわけだ。

 ちなみに、記憶においては、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンも重要な役割を果たしている。セロトニンには精神の安定や安心感などをもたらす効果があるが、これが不足すると、エピソード記憶をはじめとする「陳述記憶」の形成が不良となることがわかっている。逆に、セロトニンの不足を補うことで、新たな記憶の定着を助ける効果が期待できる。

 脳内でセロトニンの適正な濃度を維持するためには、必須アミノ酸である「トリプトファン」の摂取が必要だ。この必須アミノ酸はお米のほか、大豆製品や乳製品に広く含まれているので、普通の食生活であれば気にする必要はなさそうだが、これらの食品が不足しがちであれば意識的に摂ってみるとよいだろう。

《記憶を左右する習慣は、食事だけではない。睡眠・運動・音楽鑑賞なども、記憶に影響を与えている。『忘れる脳力』(朝日新書)で詳述している》

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