手術でがんをすべて取りきったと思っていても、実際には、目には見えない小さながん細胞がどこかに潜んでいて、それが時間が経つにつれて徐々に大きくなり、あとになって見つかることがあります。これを「再発」と言います。抗がん剤治療などの薬物療法や放射線治療で小さくなったがんが、その後徐々に大きくなった場合のことも、再発と呼ぶ場合があります。
がん細胞が血管やリンパ管を通って離れた臓器や周囲のリンパ節などにたどり着き、そこで増殖してかたまりをつくることもよくあります。これを「転移」といいます。もともとのがん(原発)と転移したがんが、最初にがんと診断されたときに同時期に見つかることもあれば(この場合、がんのステージ<進み具合>は「ステージ4」と呼ばれます)、もともとのがん(原発)を手術した後、時間が経ってから転移が見つかることもあります。
例えば大腸がんなら肝臓や肺など、がんの種類によって転移しやすい臓器があります。また、転移したがんは、もともとのがんの性質をもっています。大腸がんの手術後に肝臓や肺に転移が見つかった場合は、新たに肝臓がん、肺がんになったわけではなく、それは大腸がんの「肝転移」「肺転移」と呼ばれ、治療も大腸がんに対する治療が行われます。
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(文・山本七枝子)
石黒 めぐみ(いしぐろ めぐみ)
東京医科歯科大学医療イノベーション推進センター准教授。専門は大腸がん。同大学附属病院大腸・肛門外科などで診療に携わったのち、新薬の承認審査、多施設共同臨床試験のプロトコル作成・運営などに携わる。共著に『大腸がんを生きるガイド』がある。